東北3県で「被災した文化財」を救う人々の苦悩
―[東北3県[被災文化財]を救え!]―
3・11地震によって起きた津波は、沿岸部の文化財にも大きな被害をもたらした。「震災復興」とは、道路や建物だけではない。その地域の文化の復興も重要なのだ。
◆前例のない被害に試行錯誤、“心の復興”を担う人々がいた
陸前高田市(岩手県)の旧市街から16km離れた山間部にある、’11年3月に閉校したばかりの旧生出小学校。ここで、津波で被災した文化財の「再生に向けた活動」が続けられている。教室に並べられた、修復を待つ文化財を前に熊谷賢さん(陸前高田市立博物館副主幹)はこう語った。
「これらは陸前高田が陸前高田である証し。文化財の残らない復興は、本当の復興ではないと思います」
津波の大きな被害を受けた陸前高田市の死者・行方不明者は約1800人。博物館や図書館など文化財関連施設の職員は27人中18人が死亡、1人が行方不明に。
市内の文化財関連施設は海沿いの平地にあったため津波の被害は凄まじく、博物館約23万点、図書館約10万点のほか、日本有数の貝類博物館である海と貝のミュージアムが約11万点、埋蔵文化財保管庫約12万点の計約56万点が被災した。
「当時、私は海と貝のミュージアムに勤務していました。震災の3日後の3月14日に状況を見に行って、呆然としました。破損した収蔵物が瓦礫にまみれ、泥や砂、海水をかぶった状態で……部屋のガラスが割れ、中の資料が外に流出してしまいました」(熊谷さん)
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