不景気風が吹く「銀座の夜」最新事情
その時代の景気の波によって客層、売上げに大きな違いが出てくる。ある意味で時代を映す鏡ともいえるのが銀座だ。長引く不況、そして震災を経た今、日本最大の歓楽街の最新事情について、銀座村の住人に話を聞いてみた。
「正確な数はわかりませんが、震災後から今にかけて100軒近くのお店が閉店に追い込まれたと思われます。どのビルの看板もお店のネオンは絶やしてないから元気があるように見えますけど、実際にお店を開けているのは半分なんてことはザラです。ただ、どのお店も売上げを下げているかといえばそうではなく、より勝ち負けがハッキリしてきたって印象が強いですね」(銀座の老舗バー店主・A氏・46歳)
どのお店にも派手にお金を落とすような客は減り、「本当に通いたい店」を吟味するからこそ、勝ち組/負け組の差がハッキリしてきたということか。
「ウチのお店の常連だったホステスさんで銀座を去る方もここ1年で急増しました。つい最近も、20年銀座で頑張ってきたママが家賃の安い地元でスナックを始めるって挨拶に来ました。『いま持ってる高い洋服はぜんぶ必要なくなるから、売っ払って開業資金にするの』って笑顔で語ってましたけど、ずいぶん悪酔いしてたから寂しいんでしょうね。そのママのお店はマスコミ関係者の接待や官庁関係の常連さんが多かったみたいですけど『テレビも出版も接待費がずいぶん削られてるのはわかるけど、民主党政権になってからは、官民接待も随分少なくなったの。あそこは代議士の先生も夜遊びしないからねぇ』って。売り上げが低迷してるときにあの震災ですから、ひとたまりもなかったんでしょうね」
消える店があれば新しく生まれる店もある。世代を超えて新陳代謝を繰り返すのが銀座の魅力ともいえるが、それに疑問を投げかけるのが、銀座、六本木を中心に4店舗のクラブ、キャバクラ、飲食店を経営するB氏(48歳)。
「昔から銀座で城を構えるといえば、パトロン、金主の存在が不可欠でした。バブルがハジけた後でも、開業医、坊さんなど景気に左右されずにカネを持っている旦那衆がその役を担ってきました。でもここ数年はそうした“粋”な金持ちが減ってきましたね。新規のお店も大手チェーンによる低料金をウリにしたお店だったり、中国系の資本が入ったお店も増えました。例えば銀座八丁目にある高級クラブばっかりが入っていた某ビル。坪単価が下がったこともあって、今じゃビル全体の3割近くのお店が客単価1~2万円くらいの大衆店。銀座を好きな遊び人にとって、そのビルに入ること自体が“格”だったのに、ちょっと羽振りのいい若者や、新橋から流れてきた赤ら顔のサラリーマンが闊歩するようになると、足が遠のくんでしょうね」
銀座といえば功なし名を遂げた男たちが自分のステータスを確認する街。価格破壊の波は意外な悪循環ももたらしていたようだ。
取材・文/日刊SPA!取材班
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