更新日:2015年09月01日 15:31
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一般市民が警察の盗聴の対象に!? 「盗聴法」改正の恐怖

安倍政権が今国会で何としても成立させようと躍起になっている安保法案が批判を浴びている。実はその陰で、多くの重要法案がこっそり進められていた! ◆一般市民が警察の盗聴の対象に!?<盗聴法>
安保議論の陰でこっそり進む重要法案

東京・日比谷で行われた、盗聴法反対を訴えるデモ。成立時は国民からの批判も多かったが、現在の改正案についての関心は薄い

 5月19日、「刑事法制改革法案」が衆議院で審議入りし、8月9日には本会議で可決し、参議院での審議に移った。この法案は実は、「刑事訴訟法」や「刑法」「組織犯罪処罰法」など数本の法律を一本化して改正するものだ。だが、このなかに「通信傍受法」、いわゆる「盗聴法」が含まれているのを多くの人は知らないはずだ。  ’99年に成立した盗聴法はその名の通り、誰かの会話を合法的に盗聴することを認める法律だ。だが、従来の盗聴法は警察には極めて使いにくいものだった。  まず、盗聴してもいいとされる犯罪は「薬物犯罪」「銃器犯罪」「集団密航」「組織的殺人」の4つだけ。どう見ても、プロの反社会組織の犯罪に限られているが、それら犯罪組織への盗聴には、まず裁判所で令状を取り、全国どこの警察も、携帯電話会社などの東京本社に出向き、社員の立ち会いでの盗聴が条件とされたのだ。5日間なら5日間、捜査員は、盗聴の相手がしかるべき会話をするのをただ聞きながらじっと待っている。 「こうした厳しい条件をつけたのは当時の公明党です。実際、運用実績はこの2年間で数十件にすぎません。だが、公明党は今回は歯止めをかけようとしないようです」  こう語るのは、盗聴法に警鐘を鳴らす山下幸夫弁護士だ。改正法案の怖さを次のように説明する。 「改正法案では、北海道でも沖縄でも、各地の警察は上京の必要はなく、警視庁や道府県警にいながらして、指定した数日分の通話を録音した圧縮データを通信会社から送ってもらい、立会人なしで盗聴できるんです(捜査令状は必要)。つまり、捜査員が何を盗聴したかの『証人』がいなくなる。警察はやりたい放題になりますね」
安保議論の陰でこっそり進む重要法案

通信傍受法施行当時に、警察庁が公開した傍受装置。これまで厳しい条件のもと盗聴をしていたが、今回の改正で警察がラクに情報を入手できるようになる!?

 さらに改正案では、上記4犯罪に、殺人、傷害、放火、爆発物使用、誘拐、監禁、窃盗、詐欺、児童ポルノなどが追加される予定だ。山下弁護士は、おそらく数百件に増えることもあり得ると予測している。つまり現法では、対象はあくまでも暴力団など反社会組織に限定されているが、改正法案では、それを一般市民にも広げようとしているのだ。 「今の時代の特異性は、国民が一人一台携帯電話やスマホをもっていることです。固定電話なら、盗聴しても話し手が誰かの特定が難しいですが、スマホは特定できる。もし改正案が施行されれば、国が狙うのは、おそらく、国会前でデモをしている若者や、反原発を訴える市民や労働組合です。国会前でなくても、今、デモは一般市民にも近い存在になっていて、安倍政権への脅威にもなっている。  デモの主催者には連絡先の携帯電話番号を公開する人もいるので、真っ先に狙われ、ちょっとでも怪しい会話があれば、即連行が可能です。ただし、現法でも暴力団を何十件と盗聴してきましたが、実は逮捕はしても裁判で争ったことはないんです。つまり改正法案でも、実際に逮捕して裁判をして投獄するというよりも、警察が連行することで市民を威嚇して黙らせることに目的があるのだと思います」(山下弁護士) 取材・文・撮影/樫田秀樹 志葉 玲 ― 安保議論の陰でこっそり進む重要法案 ―
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