「ブラック企業が溢れていて転職できない」ハロワ通い1年半以上、精神的に疲れて…
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆「ブラック企業が溢れていて転職できない」xxx(ペンネーム)無職・男性・35歳
転職活動で苦戦しています。これまで事務職を経験してきたため、事務職志望なのですが、離職期間がもう1年半以上になってしまいました。理由は、ブラック企業ばかりだからです。
ハローワークに行き、応募の手続きをしようとすると、職員から「その企業にはクレームが何件もきている」とか、「その企業は過去頻繁に事務職の求人を繰り返し掲載している(つまりすぐに人が辞めてしまう)」と言われて、うかつに応募できない状況が続いております。アルバイトをしながら転職活動を続けておりますが、さすがに精神的に疲れてしまいました。
そして、とある友人から「まだ正社員の職に就けていないなんておかしい」と言われ、先日絶縁されてしまいました。佐藤さんだったらこの状況をどう打開されますか? 本当に希望が見えません。
◆佐藤優の回答
世界的規模で、弱肉強食の新自由主義が猛威をふるっています。ブラック企業と呼ばれている会社も、競争に勝利するためには労働者からの搾取率を高めるのが早道であるとの資本主義の法則に忠実に従っているからです。
もっとも、経済には利潤の追求だけでなく、さまざまな側面があります。コミュニティデザイナーの山崎亮氏は
《 そもそも経済(経世済民)という言葉も金だけを意味する言葉ではなかったはずだ。世の中をうまく治めて人々の幸せな生活を実現させること、つまり地域の課題を乗り越えて人々が豊かな人生を送ることが目的だった。
それがいつの間にか「経済的な成功」ということになると「お金がたくさん手に入った」ということとほぼ同義になるほど、経済と金はひっついてしまった。僕らはもう一度、「経済」や「豊かさ」がどんな要素から成り立っているのか、じっくり考えてみたほうがいい時期にさしかかっている。
人とのつながりや、人からの感謝や、自分の役割が増えることや、自分にできることが増えることの価値。こうしたものと金や物を持っていることとが組み合わさって、僕たちの豊かさは成立しているはずなのである。》(『コミュニティデザインの時代』82~83頁)
と述べています。私も山崎氏の考えに賛成です。
山崎氏は、荒廃している地域で人間と人間の絆を構築し、経済と社会を活性化させる専門家です。初めから理想的な会社や地域はありません。関係者が少しずつ努力することによって環境を変化させていく以外に、問題を解決する術はありません。
今のアルバイトがあなたの適性に合っていて、しかも今後、スキルがついて正社員になる、あるいは独立できるという展望があるならば、事務職の正社員となるということにこだわらずに、別の方策を考えてみることをお勧めします。また、ハローワークを通じて、あなたがブラック企業であるという印象を抱いている会社に就職してみることも一案です。仕事はキツくても、その職業を通じて身につけることができるノウハウがあるならば、一定期間、そこで働いてみるのもいいと思います。
あなたは、まだ35歳ですので、ハローワークを通じての就職の可能性も十分あります。これが10年後になると、かなり厳しくなります。あなたの10年後について、そろそろ真面目に考えてみる必要があります。
ちなみに、日本も高齢化社会を迎えるので、介護分野の仕事ならば、今後も職があります。介護はキツいという風評が流れているので、この仕事に就きたがる人が少なくなっていますが、事務職や技術職でも、介護労働よりもキツい仕事はいくらでもあります。ヘルパーの資格を取って、介護関係の仕事に就き、そこで人脈を構築して事務職に転職するという戦略を立ててもいいかもしれません。
勇気を出して一歩前に踏み出すことをお勧めします。
【今回の教訓】
初めから理想的な会社はありません
●『90分でわかる日本の危機』発売記念 佐藤優サイン会
※定員80名。電話予約可能
・11月5日(木)14:00から
浜書房バーズ店(横浜市港南区) 電話045-831-6939
◆募集
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。
⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form(PCのみ対応)
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』のなど著書多数。最新刊は『90分でわかる日本の危機』’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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