番外編その5:知られざるジャンケット(2)

『IR実施法』の原案をつくる際、専門部会で討論されたジャンケットへの理解とは、だいたい次のようにまとめられるのだろう。それが正しい理解なのか間違っていたものなのかは、ひとまず措(お)いておく。

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【1.いわゆる「ジャンケット」の実態及び諸外国の規制の例】
 諸外国においては、誘客だけでなく主に次のような行為を業として行う業者を「ジャンケット」と呼んでいる。その実態は必ずしも明らかではないが、様々な問題を惹起していると言われている。
①特に富裕層を対象に誘客などのマーケティングを行う。場合によっては、カジノ事業者に代わって「コンプ」を提供する。
②カジノ事業者との契約により、カジノ事業者からカジノフロア等を借り、顧客相手にカジノ行為を行う。
③カジノ事業者から借入を行う等により、カジノ施設内で顧客に貸付けを行い、かつ、回収を行う。
 このため、諸外国においては、上記のような、いわゆる「ジャンケット」の行為を業として認める場合には、「ジャンケット・プロモーター(マカオ)」「国際マーケティング業者(シンガポール)」「インディペンデント・エージェント(米国ネバダ州)」のように、業の類型を法制上つくり、免許等の規制の下で管理している。

【2.これまでの議論】
「諸外国におけるいわゆる『ジャンケット』の取扱についてはきわめて慎重に検討を行うこと。」(第11項(参議院))附帯決議 推進法の国会審議の過程(提案者答弁趣旨)
 海外の事例によると、ジャンケットとは、プレーヤーをカジノへと誘客する代理人として、カジノ運営事業者にとっては売上・収益増の重要な要素となっている。その一方で、ジャンケット制度がプレーヤーのゲームへの過剰なのめり込みと、その結果としての多額の債務を助長する例も見受けられる。ジャンケットの導入如何やそれに対する制度等は、これから政府において検討されて定められていくことになるが、ジャンケット制度については、社会に及ぼす影響を踏まえた極めて慎重な検討が必要。
 我が国において、いわゆる「ジャンケット」を認めると、IR事業を遂行するため、IR事業者にのみカジノ事業を特別に容認するカジノ事業免許制度の趣旨を没却させることとなる。したがって、諸外国のように、「ジャンケット」という業の類型を設けることはしない。
 いわゆる「ジャンケット」が行っている行為については、これまで推進会議で整理した個別規制によって、我が国ではできないこととなっているか、又はカジノ管理委員会の管理の下に置かれることとなっている。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/ir_kaigi/dai7/siryou3.pdf

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 これを読むと、自ら「その実態は必ずしも明らかでない」と記していることでも推察できるように、『IR実施法』の原案を作成した有識者たちのジャンケットに関する理解はきわめて低い、と主張しても、それほど間違ったものではなかろう。

 すなわちジャンケットとはよくわからない業種であるのだが、なにやら怪しげだから(のちにシンガポールのように許可するかもしれないけれど)ひとまず禁止しておこう、とするのが、どうやら日本政府の立場のようだ。(つづく)

※次回の更新は6/21(木)です

PROFILE

森巣博
森巣博
1948年日本生まれ。雑誌編集者を経て、70年代よりロンドンのカジノでゲーム賭博を生業とする。自称「兼業作家」。『無境界の人』『越境者たち』『非国民』『二度と戻らぬ』『賭けるゆえに我あり』など、著書多数。