『日本という物語』をどう伝えるか【第4回】――日本文化の基層としての縄文文化

縄文時代の人々の様子、季節は秋(新潟県立歴史博物館のジオラマより)

 前出の小林達雄氏は、次のように分析しています。

 縄文時代の前の時代に当たる打製石器を用いた旧石器時代は、獲物を追って移動しながら生活していたため、「共同で暮らす人数も2~3家族程度」でしたが、その後、氷河期が終わった日本列島では、豊かな自然環境のもと縄文時代が幕開けし、狩猟・漁猟・採集と一部の栽培により定住できるようになり「通常のムラで5~10家族、30~80人に増え」、ライフスタイルが変化し格段に豊かになった……と記しています(『別冊太陽――縄文の力』16頁、平成25年刊)。

 縄文時代の人々の生活の様子に関しては、本書の「縄文時代探検!」のコーナーで詳しく紹介しています。これは、博物館と学校が連携しながら生徒の教育向上に資する「博学連携」の観点から、新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)の協力のもと、アクティブ・ラーニング(活動的な学習)の一環としてまとめたものです。

 この博物館では、縄文時代のムラや人々の豊かな暮らしの様子が、冬、春、夏、秋の四季に分けて実物大の模型や人形で復元・展示されており、これを生徒が見て、調べ、まとめるページとなっています。

「世界最古の土器の一つ」である縄文土器の登場は、煮炊きによる木の実等の食料加工や食料の貯蔵を可能にするなど、縄文時代の食生活を格段に豊かにしました。こうして、「世界でも第一級の縄文文化」(前出、佐々木高明氏)が花開きました。

 そのため縄文時代の本文記述は、従来の教科書ではせいぜい1頁ほどの分量でしたが、当社は倍の2頁にしており、また前述の博物館のコーナーは4頁で掲載しクローズアップさせました。

世界の古代文明と肩を並べる縄文文化の先進性


 また、目次としての単元構成も工夫を施しました。

 戦後の歴史教育では、原始・古代の叙述において世界の主な古代文明(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)が先進事例として最初に紹介され、その後に日本列島における縄文時代が記述されるという順序が一般的でしたが、これでは世界の諸文明の方が縄文文化より長い歴史があるかのように生徒が理解してしまいます。

 そこで本書では、年代的にも世界の古代文明より古い縄文文化を先に紹介し、日本の歴史に興味関心を持ってもらうようにしました。

 さらに、当時、装飾品だったヒスイや、石器に使われた黒曜石の原産地が特定の地域に限られていたにもかかわらず、北は北海道から南は沖縄まで、日本各地の縄文遺跡から発掘されている地図を掲載し、「縄文文化圏」ともいえる一つの文化圏が、この時代に日本列島全体で成立していたことも理解できるようにしました。

 縄文時代に関して、育鵬社教科書と同じ問題意識を持ったテレビ番組がありました。平成27年11月8日に放映されたNHKスペシャル「縄文 奇跡の大集落」です。その番組紹介文には、次のような記述があります。

「青森県にある巨大遺跡、三内丸山……、20年を超える発掘から浮かび上がってきたのは、従来の縄文のイメージを覆す、巨大で豊かな集落の姿だった。この縄文文化に、今、世界の注目が集まっている。……その暮らしぶりは、世界のどの地域でも見られない、洗練されたものとして、欧米の専門家から高い評価を獲得している。さらに、世界を驚かせているのが、その持続性。縄文人は、本格的な農耕を行わず、狩猟採集を生活の基盤としながら、1万年もの長期にわたって持続可能な社会を作りあげていた。こうした事実は、農耕を主軸に据えた、従来の文明論を根底から揺さぶっている……」

 この番組は、最新の研究成果や英国の大学教授らのインタビューを交え、「世界に類のない縄文文化の真実に迫った」(番組紹介文より)質の高い内容でした。(5に続く)

(文責・育鵬社編集部M)

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