「妖怪の刺青」が身体に刻まれた女性の“壮絶な半生”。「くさい」といじめられた幼少期、未成年のうちに妊娠
中部地方のとある病院で働く女性の身体には、妖怪の刺青が複数刻まれている。マオさん、42歳だ。刺青を入れたのは3~4年前のこと。「妖怪が好きだったんです」と話す彼女の生い立ちは凄絶の一言に尽きる。彼女はなぜ、妖怪に心を寄せるのか。半生に迫ると、その理由がみえてきた。
マオさんが生まれる以前、母親はいわゆる夜の飲食店を営んでいた。そこに転がり込む形で同居したのが父親だったという。
「土建屋をやっていた父は、母のことが気に入って住み着いたと聞いています。その家には母の姉、前夫との子どもがいました。実は、父がこの2人とも性的な関係にあったらしいのですが、かなりあとになって母は知ったようです。父は、当時就学前だった母の連れ子を犯したことになります。また伯母には知的障害があり、性被害だとわからなかった可能性があります。その後、父と母の間に生まれたのが私でした」
マオさんにとって父違いにあたる姉は、10歳ほど年が隔たっているにもかかわらず、常に敵愾心を向けてきたという。
「当時はなぜ、私に対してあたりがきついのか、理由は判然としませんでした。しかしあるとき、姉が『父親が違うんだ』『お前の父親に犯されたんだ』と騒いだことで、ようやくはっきりと意味がわかりました」
姉の精神は目に見えて崩壊していった。だが両親は子どもにまるで関心がない。マオさんが幼い頃から、特に父親は絶対的な権力者だった。
「食べ物は、誰よりも父が先に食べます。例外はありません。たとえば仕事で父親が遅くなると、家族全員で待たなければなりません。父に来客があれば、私たちはお客さんが帰るまで食べることは許されません。父と母がパチンコに行った日は、子どもたちはご飯はありません。すべてが父親を中心に回っている家庭だったので、子どもが意見を言うなどは考えもしませんでした」
だが唯一、子どもながらに父親に対して抗議をした姉の姿を覚えているという。
「父はそのときの気分で犬を買ってきました。しかし何かしら気に障ることがあると、その犬はいなくなってしまうんです。おそらく、どこかへ捨てたのだと思います。私が記憶しているだけでも、5匹ほどの犬が我が家には来て、どこかへ消えていきました。そんななか、姉が捨て猫を拾ってきて飼っていました。大人に迷惑をかけることもなく、きちんと世話もやっていたんです。ところがあるとき、その猫も消えてしまいました。姉がかなりの剣幕で父に詰め寄ったのを覚えています。しかし結局、父は『知らない』としらを切り通しました」

マオさん
実の父が行った鬼畜の所業
「絶対的な権力者」のもとで崩れていく家庭
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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