金正恩政権・崩壊へのカウントダウン(5)――世界が望むシナリオは亡命だが

信頼関係の構築――米国での日米首脳会談(2017年9月21日現地時間)首相官邸HPより

「戦略的忍耐」の結果、何が起きたか

 現下の国際秩序を蝕む北朝鮮の核・ミサイル開発という「がん細胞」は、金正日(キム・ジョンイル)政権以降、開発が進み、現在の金正恩(キム・ジョンナム)政権となり急速に巨大化・悪化している。  そこにメスを入れ、除去する以外に解決の方法がない状態となっている。  これまでアメリカの歴代政権、つまり、クリントン、ブッシュ、オバマの各大統領は、25年間にわたり北朝鮮の核問題を解決すべく交渉してきたが有効策を打ち出せずにきた。  今年1月のオバマ大統領からトランプ大統領への申し送り事項の中で、国際情勢における当面の最大の脅威が北朝鮮であること伝えられたという。オバマ政権では、対北朝鮮政策の基本方針を「戦略的忍耐」をとしていたが、その方針は破綻した。  そのツケを一手に引き受けたのがトランプ大統領である。  なぜ、北朝鮮の核・ミサイル開発が脅威なのか。  例えば、北朝鮮が開発した小型核爆弾が、中東などの過激派組織に渡ったら、どうなるのかを考えてみれば簡単だ。

すべての電子機器が機能不全となる「電磁パルス攻撃」とは

 さらに、最近報道され始めている「電磁パルス攻撃」である。  仮に、ある地域の高度30~400キロの上空で核爆発を起こされれば、その際に生じたガンマ線により雷のような巨大な電流が発生し、強力な電波の電磁パルスが地上に襲いかかり、電子機器が作動しなくなるというものだ。  空から強力な電波の津波が来ると考えればいい。電気を通して作動しているすべての電子機器が機能不全となる。  核爆弾が仮に日本列島上空30キロで爆発した場合は、東京を中心にして半径600キロの範囲、上空100キロの場合は半径1100キロ、つまり日本列島をほぼ全範囲に電磁パルスが襲ってくるという。(詳細は産経新聞の「電磁パルス攻撃の脅威とは?」を参照)  北朝鮮は「日本列島を核で海に沈めるべきだ」などと放送しているが(9月13日、国営の朝鮮中央通信)、あながちはったりでもない。

トランプ大統領の「自国と同盟国」を守る具体策は

 ビジネスで成功した経営者であるトランプ大統領は、戦略的忍耐などの抽象論ではなく、「自国と同盟国」を守る具体的な成果を出すであろう。  安倍首相には、トランプ大統領からホットラインを通じ、直接、情報が伝えられている。韓国には仕事で駐在している日本人とその家族が約3万人、旅行者などを含め約6万人の邦人がいる。その避難、安全確保のみならず、わが国の安全確保のために尽力している。  世界が望んでいる最も望ましいシナリオは、米国の圧倒的な軍事圧力によって、戦火を交えることなく金正恩氏が亡命してくれることである。  それが適わない場合、アメリカは軍事制裁に踏み切る可能性が高い。一瞬にして金正恩政権を崩壊させるシミュレーションを繰り返している。こじれれば、極東アジアがかつてない混乱に陥る。  トランプ大統領は、その最終的な見極めをするためアジアを歴訪する。その道中に不測の事態が起きないことを願うばかりだ。(了) 【本連載に関連する記事は以下の通り】 ・朝鮮半島有事、李英和氏の優れた情勢判断(2017.5.23) ・朝鮮半島の有事を救う【岡崎久彦大使の安全保障論】(2017.4.28) (文責=育鵬社編集部M)
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