「なぜ日本人が議論や情報戦に疎いか?」(2)――慰安婦問題を巡る日韓合意の日本政府声明文の英訳が大問題!

韓国ソウルの慰安婦像

韓国ソウルの慰安婦像


日本人の長所の源である感傷主義は短所でもある

 その一方で、日本人の長所の源である感傷主義が、日本人の短所にも繋がります。

 感覚に意識が向かい、それを越えた客観的な対象や、真理、原則に意識が向かわないために、論理的に物事を考えることが苦手です。

 また、ドーク教授は、日本人の「思いやり」の姿勢は、そのような文化を有しない外国や外国人に利用されてしまうと警告します。

 それで思い当たるのが日本の外交です。日本政府が一所懸命に「思いやり」や「誠意」を示しても、逆に、「謝るのは罪を認めた証拠だ」「罪を認めたならもっと金を出せ」と言われ、状況が悪化するばかりのことがよくあります。情報戦という言葉がありますが、日本人は効果的に国益を守ることはおろか、まともな議論もおぼつきません。

慰安婦問題を巡る日韓合意の日本政府声明文は、どう英訳されたのか

 2015年12月28日、突然結ばれた、いわゆる慰安婦問題を巡る日韓合意で、日本政府は次のような声明を出しました。

 「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」

 この声明文から感じ取る印象は、慰安婦の女性たちが実際にどのような境遇にあったかという客観的な事実よりも、「色々とご苦労があったでしょう」という一般的な「思いやり」の伝達ではないでしょうか?日本人なら、詳細には拘らずに「誠意の表現」として聞き流すでしょう。

 ところが、外務省はこれを字面どおりに英訳してしまいます。まさに直訳です。

 As Prime Minister of Japan, Prime Minister Abe expresses anew his most sincere apologies and remorse to all the woman who underwent immeasurable and painful experiences and suffered incurable physical and psychological wounds as comfort women.

 こう書いてしまうと、声明文に込められた「思いやり」のフィーリングはすっ飛んで、赤裸々な罪の告白にしか聞こえません。欧米人の耳には次のように聞こえるはずです。

 「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として、計測不可能な苦痛に満ちた経験をされ、治癒不能な肉体的および精神的な傷を負った方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」(山岡訳)
 
 ずいぶんと印象が異なることにお気づきでしょう。このような直接的表現だと、読者には「思いやり」の心はまったく通じず、「日本人はとんでもなく残酷なことをしたことを認めて謝罪に追い込まれた」と理解してしまうのです。だから、謝罪しても問題の解決にも日本の名誉回復にも全く繋がらず、罪を認めた犯罪者と見なされてしまいます。ドーク教授が指摘する、日本人の感傷主義が弱点に転化した例です。

 日本がなぜ情報戦で完敗するのか? その根源は、土着宗教が維持された日本の希少性と感傷主義にあるというお話でした。

文:山岡鉄秀(やまおか・てつひで)
1965年、東京都生まれ。中央大学卒業後、シドニー大学大学院、ニューサウスウェールズ大学大学院修士課程修了。2014年、オーストラリアのストラスフィールド市で中韓反日団体が仕掛ける「慰安婦像設置」計画に遭遇。子供を持つ母親ら現地日系人を率いてAJCN(Australia-Japan Community Network)を結成。その英語力と交渉力で、非日系住民の支持を広げ、圧倒的劣勢を挽回。2015年8月、同市での「慰安婦像設置」阻止に成功した。現在、公益財団法人モラロジー研究所道徳科学研究センター人間学研究室研究員。AJCN Inc.代表。『日本よ、情報戦はこう戦え!』(育鵬社)を刊行




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