共産主義から最も被害を受けた国は日本とウクライナだった!――ウクライナ人だから気づいた日本の危機

<文/グレンコ・アンドリー『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』連載第1回>

ロシアの共産主義革命から100年

 2017年はロシア革命から100年が経過した年である。これは初の共産主義革命の成功を意味している。そして、その共産主義革命後、世界初の共産主義国家ソビエト・ロシア、後のソビエト連邦(ソ連)が成立した。更にその後共産主義が世界中に広まり、各国に共産党が誕生し、第二次世界大戦後、ソ連の援助で共産主義・社会主義国家が次々と生まれた。

1917年に起こったロシア革命で、赤の広場を行進するボリシェヴィキ軍

 共産主義思想の根本的意義は周知の通りであるが、敢えて端的に再言及するとすれば、それは私有財産の否定と、伝統文化・信仰の否定に他ならない。  これも周知の事実であるが、共産主義勢力は、この世界に最も多くの悲劇をもたらした思想である。共産主義により引き起こされた虐殺や、戦争によって殺害された人の数は計り知れない。共産主義者は人の命に全く価値を見出さず、目的のためならばいくらでも存在の抹消を正当化してきた。冷徹で残虐な共産主義者の戦略は、多数の国家や民族に被害を与え続けているのである。

共産主義から最も被害を受けた国は日本とウクライナ

 その歴史を考慮した時、私見によれば、最も共産主義からの大規模な被害を被ったのは、日本とウクライナであると思われる。  なぜそう思えるのか。私の設定した基準を挙げると、第一に「犠牲者の数」、第二に「国家体制への打撃」、第三に「思想的な被害」やそれに繋がる「被害期間の長さ」である。 ①犠牲者の数  「犠牲者の数」で言えば、ウクライナは共産主義者が起こした虐殺や戦争によって、1千万人以上の同胞を失ってしまった。  日本においては共産主義者の謀略によって先の大戦に突き進み、320万人の同胞を失ったことも知られている通りであろう。 ②国家体制への被害  「国家体制への被害」も甚だしい。共産主義のため、ウクライナの独立は74年も遅れ、ウクライナのエリート層がソ連に大量殺害されたため、国を引っ張る指導層の育成は不可能だった。そのため独立しても国家発展は順調に行かない。  日本も大きな国家体制への被害を受けている。日本人の誇りである大日本帝国が滅び、日本は共産主義者に押し付けられた占領憲法を基に動かなければならない。言うまでもないが、日本の伝統や国体を無視するような、日本を骨抜きにする目的で作られた憲法を基に国家が発展するわけがない。 ③思想的な被害やそれに繋がる被害期間の長さ  また、「思想的な被害」が大きく、その「被害期間」も非常に長い。ウクライナでは、ソ連が民族のエリートや最もアイデンティティの強い農民層を虐殺した上で、残りの人口を徹底的に洗脳した。そのためウクライナでは、愛国者が減少し、売国奴が多数となった。そのソ連の洗脳の名残が現在でも残っている。  日本の場合も同じくウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムに基く自虐史観や愛国心の欠如が大きな打撃を与えており、現在でも日本人の覚醒と国家発展の足枷となっている。また日本の教育界を独占した共産主義者による反日教育も連綿と続いており、日本の正常化はまだまだ道半ばだ。  従ってウクライナは既に百年、日本は戦前の謀略を含めれば約80年ほど様々な形で、共産主義からの被害を受けている。

中国は共産主義の犠牲者か?

 もちろん、他国も共産主義により大きな被害を受けている。中国では毛沢東の文化大革命政策によって数千万人が殺害されたと言われている。  しかし中国の場合は日本やウクライナと事情が異なっている。日本とウクライナの場合は両国共に共産主義の侵略の標的となり、外界からの攻撃を受けた。つまり日本とウクライナは受身であり、二国を攻撃した主体は国外にあったのだ。具体的に言えば、その主体とはソ連共産党である。確かに、日本にもウクライナにも共産主義者は存在していた。しかし、この共産主義者は売国奴であり、外界に存在していた主体の手先に過ぎない。  だが中国の場合は、中国人が主体であり、中国人による中国人の殺害であったから、それは中国の国内の問題であると言える。その大量殺害の評価は中国人がしなければならない。だから非中国人である我々がいくら「中国は共産主義の被害者だ」と主張しても、中国人が認識を同じくせぬ以上、何の意味もない。しかも、現在の中国では、共産主義が中華帝国主義と合体して、対外覇権主義に乗り出している。つまり、中国は共産主義の被害者と言うよりも共産主義の主体そのものである。  だから犠牲者の数が多いとはいえ、中国と共産主義の関係は日本やウクライナと共産主義の関係とは全く違う。  次回は、日本とウクライナが受けた共産主義の被害について具体的に述べたい。 【グレンコ・アンドリー】 1987年ウクライナ・キエフ生まれ。2010~11年、早稲田大学へ語学留学で初来日。2013年より京都大学へ留学、修士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程で本居宣長について研究中。京都在住。2016年、アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門で「ウクライナ情勢から日本が学ぶべきこと――真の平和を築くために何が重要なのか」で優秀賞受賞。
1987年ウクライナ・キエフ生まれ。2010~11年、早稲田大学へ語学留学で初来日。2013年より京都大学へ留学、修士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程で本居宣長について研究中。京都在住。2016年、アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門で「ウクライナ情勢から日本が学ぶべきこと――真の平和を築くために何が重要なのか」で優秀賞受賞。月刊情報誌 『明日への選択 平成30年10月号』(日本政策研究センター)に「日本人に考えてほしいウクライナの悲劇」が掲載。
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