鉄道が導く「都市と国土のイノベーション」3

鉄道による「地域イノベーション」: つくばエクスプレスの事例

 こうした背景からわが国の現代都市の多くは、「鉄道」を中心につくられるに至っている。  昔から、「城」を中心に「城下町」がつくられたり、「港」を中心に「港町」がつくられてきたのと同じだ。  ただし、昨今では、鉄道整備はかつてほど旺盛には進められておらず、結果として鉄道の「都市形成力」を肌で感じ、それを理解している国民は限られてしまっているのが現状だろう。  東京都心とつくば市とを結ぶ「つくばエクスプレス」の開業時(2005年)と、開業10年目(2015年)のみらい平、柏の葉キャンパス、八潮の駅周辺の様子からも「鉄道の都市形成力」は一目瞭然だ。  そもそも、鉄道がなかった土地に鉄道が通れば、その土地には、実にさまざまな可能性が生まれる。  鉄道がなければ誰もそこに住み着かないような場所でも、ひとたび都心に直結する鉄道が整備されれば、その駅周辺は、宅地として、オフィス用地として一気に注目を集め、開発が進められる。  そうして昼間および夜間の人口が増えれば、商店等、各種のサービス産業の需要が生まれ、そのための立地も進められるようになる。  一方で政府の方も、こうした民間投資を見通して、上下水道や道路、公共施設等のさまざまな公共の投資を進めるようになる。  そして、そうした官民合わせた投資はもちろん、さらなる投資を呼び込むことになり、都市が一気に形成されていったわけだ。  つまり鉄道の整備により、沿線の土地が、抜本的に質的に生まれ変わることになったのだ。そもそもイノベーションとは「深い部分での構造変革」を意味するものである。  その意味において、このつくばエクスプレスの事例は、鉄道の整備は沿線の土地に対して明確な「地域イノベーション」をもたらすものであることを、雄弁に物語っているのである。

新幹線は都市を成長させる「大河」である

 このつくばエクスプレスに見られるような、地域イノベーションが、明治期以降、日本各地でつくられたそれぞれの鉄道の沿線地域で積み重ねられていき、今の「国土」が形成されていったのである。  日本の三大都市圏の発展は、それぞれの地域の鉄道各社の投資なくしては、あり得なかったし、地方の各都市の発展もまた、同様に各地の鉄道会社の投資なくしてあり得なかった。  ただし、それら都市の発展において、それぞれの都市「内」の鉄道投資が枢要な役割を果たしたことは間違いないとしても、やはり、東海道本線や東北本線などの、都市「間」の鉄道投資は、重大な「ディープインパクト」をそれぞれの都市、さらには、それらをすべて含めた「国土」の発展にもたらしたことを忘れてはならない。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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