一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる(8)

三条大橋

『未来を』

 2020年6月2日発売、藤田麻衣子著『一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる――願いが叶っていく58の気づき』(育鵬社)は、「オーケストラとともに歌を歌いたい」という夢を描き、20歳で上京した一人の女性シンガーソングライターが、夢を追い、叶えていく軌跡(奇跡)を綴ったエッセイである。  前回の「一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる(7)」では、本書を題材に「自分の夢を叶えるためには、どうすればいいのか」ということに焦点を当てて、その第一に「潔さ」というキーワードを挙げた。    おさらいをすると、こうである。  藤田さんは、名古屋から上京した理由を聞かれたとき、最初の頃は、恥ずかしさもあって、明快に答えることを避けていたが、そういう自分のかっこ悪さが嫌で、「オーケストラで歌う人になりたくて、東京に出てきたの」と、きっぱり言うことにした。  その「潔さ」が、言霊としての〝言葉の力〟を生み出し、夢の実現につながったと説いた。  それに続いて今回は、第二のキーワードとして「ネバーギブアップ」を挙げてみたい。    「ネバーギブアップ」  そう、藤田さんは「あきらめない」人なのだ。  藤田さんには『未来を』という歌がある。  男性が主人公の歌だ。  歌詞の内容は、ものすごく簡単に説明すると(ご存知のファンの方も多いと思うが)、「どんなに困難なことがあってもあきらめずに、自分の未来は自分の手で切り開いていく」という決意表明のようなものだ。  主人公は、「信じ続ければ、奇跡は起こる」ということを、自分自身に言い聞かせているようでもある。  これは、本書に書かれている藤田さん自身の姿とも重なる。    話を上京直後に戻すと、藤田さんは、ボイストレーニングスクールに週1で通い始める。その頃、どこかの待合室で、ふと気になった本を手にすると、そこには次のようなことが書かれていた。  “何かを得ようとして目指している人がどんなにたくさんいても、本気で行動する人がその中にどれだけいるのか。自分があきらめなければ、周りがどんどんあきらめていく”  この文章を目にしたとき、藤田さんは「あきらめないことなら私はできる」と思ったという。だから、「私は歌手になれるな」と感じたのだと。    「ネバーギブアップ」の姿勢は、本書の至る所に出てくる。これまたあっぱれである。  関連する面白いエピソードとしては、歯科衛生士の専門学校に通っていた頃の話として、こんなことが書かれている。  日々の悔しいこと、恋愛話など、学校の友達に何度も話していると、「また言ってるの? 麻衣子、しつこいよ(笑)」と呆れられていたそうなのだが、そうした消化できない思いをノートに書き留め、メロディをつけたら歌ができて、その歌を友達に聴いてもらったら、何度も聴いてくれた、と。  「私のしつこい話は、2、3回しか聞いてもらえないのに、歌にすると自ら何回も聴いてくれる」と。  なんとこれが、シンガーソングライター藤田麻衣子誕生の原点だったのである。  (文:育鵬社編集部O)
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