一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる(9)
『思い続ければ』
2020年6月2日発売、藤田麻衣子著『一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる――願いが叶っていく58の気づき』(育鵬社)は、「オーケストラとともに歌を歌いたい」という夢を描き、20歳で上京した一人の女性シンガーソングライターが、夢を追い、叶えていく軌跡(奇跡)を綴ったエッセイである。 前回の「一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる(8)」では、本書を題材に「自分の夢を叶えるためには、どうすればいいのか」ということに焦点を当てて、第二のキーワードとして「ネバーギブアップ」を挙げた。 今回は、第三のキーワードとして「言葉の力」を挙げる。 第一のキーワードとして「潔さ」を挙げた時にも触れたが、藤田さんは、上京した後、その理由を尋ねられて、最初は恥ずかしさもあって明快に答えられなかったけれども、ある時から、開き直って「オーケストラで歌う人になりたくて、東京に出てきたの」ときっぱり言うようになった。すると、その言葉が言霊となって、夢の実現につながったのである、と。 デビューからいくつもの階段を上り下りして(その間のさまざまな出来事は、ぜひ、本書で読んでいただきたい)、2013年10月11日、藤田さんは日本武道館でのピアノ弾き語りワンマンライブの日を迎える。 武道館でのコンサートといえば、アーティストの誰もが夢見る舞台であろう。 一歩一歩、歩みを重ねてきた藤田さんにとってそれは、大きなジャンプアップのチャンスだったが、一方で、その重圧は相当なものだった。 これまでの会場と比べると桁違いに大きく、ワンマンライブ、しかも全曲、ピアノの弾き語りである。 自信のなかったピアノは毎日通し練習をして体に入れることにして臨んだものの、新曲作成がはかどらず、日々、焦りとストレスを生んでいくことになる。 この時にできたのが『思い続ければ』という歌の原形だったという。 でも、藤田さんの夢は「オーケストラとともに歌うこと」であって、武道館でのコンサートが夢だったわけではないと思いなおし、ひとまず『思い続ければ』は、その時のために封印する。 新曲ができないままに、どんどん日は過ぎていき、心も体もガチガチになって「逃げたい」と思ったという。 そして、新曲『つぼみ』はなんと、ライブ前日の23時に完成(そんなことがあるのかと、本当にびっくりする)。 「明日は、きっとできる」 そう言い聞かせて眠りについたという。 翌朝――。 気持ちのいい青空を見て「今日はきっとうまくいく」と思えたという。 しかし、いったい何人の人が来てくれるのだろうと心配しながら向かった武道館。 開演時間には8000人の観客が武道館につめかけていた。 拍手と歓声の中をステージへと歩きながら、「新しい扉が開いた」と思ったという。 大きな達成感と幸福感に包まれながら、無事に終わった武道館ライブ。その後、自分で書いていたことも忘れていたメモ書きが出てくるのだ。 そこには、「二年後、武道館に立つ。」と書いてあった。 (文:育鵬社編集部O)ハッシュタグ
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