国土保全イノベーション:「砂防」が守る日本の国土3

土砂災害を防ぐための「砂防」

 こうした急激な国土の地形変化が、人里と関わりのある場所で起こったとき、それは「土砂災害」と呼ばれる災害となる。  つまり「土砂災害」とは「国土の急激な地形変化に伴う災害」なのであり、「砂防」という取り組みはまさにこうした「土砂災害」を防ぐためのものなのである。  この「土砂災害」は毎年実に多くの人々の命を奪い続けている。  自然災害死と言えば地震や洪水がイメージされることが多いのかもしれないが、東日本大震災や阪神・淡路大震災といった超大型の二つの災害を除けば、実は戦後、自然災害で亡くなった方の三分の一以上(36%)が土砂災害で亡くなっている。  だから今、「砂防」の取り組みは、日本国民の「生命」を守るために必要不可欠なものとなっているのである。

洪水を防ぐための「砂防」

 ただし、国土の地形変化に伴う災害は、この土砂災害だけではない。実は、「洪水」もまた国土の地形変化によって誘発されるものでもある。  例えば、先に紹介した安政年の富山での大土石流災害以後、富山平野では洪水が頻発するようになった。これは次のようなメカニズムによる。  まず、この土石流の直接のきっかけは、ある一つの大地震だった。この大地震のため、常願寺川の上流部の山が崩壊し、常願寺川の上流部に、大量の土砂(約4億t )が覆いかぶさることとなった。  この時に、常願寺川はさまざまな場所でせき止められ、天然のダム(大きな水たまり)がいくつかできてしまった。そしてそのうちの一つがその地震に引き続いて起きた余震によって決壊し、先に紹介した「大土石流」(鉄砲水・山津波)となって、富山平野の人々に襲い掛かったのである。  この土石流災害の後、常願寺川の上流に崩れ落ちた大量の土砂が、常願寺川から流出し続けた。結果、常願寺川の「底」が、どんどん高くなっていった。  そうなれば大雨が降るたびに洪水が起こり、川の位置があっちに行ったりこっちに行ったりして変わってしまうようになった。  こうして常願寺川は、「日本一の暴れ川」と呼ばれるようになった。  大雨ごとに洪水になって川の位置が変わってしまう─言うまでもなく、こんな状況が続けば、富山で安心して暮らすことも働くことも産業を育成していくことも不可能となる。  だから、富山の繁栄を続けるためには、先に紹介した「土石流」を防ぐための「砂防」が必要であると同時に、頻繁に起こる常願寺川の洪水を抑止するために、常願寺川へと流れ出る「土砂の量」を抑制するための「砂防」も求められるに至ったのである。  この「砂防」があってはじめて、常願寺川の洪水を抑制でき、富山平野で持続的な都市活動を始動・継続していくことが可能となったのである 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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