国土保全イノベーション:「砂防」が守る日本の国土4

 

富山市を「守る」ための砂防の取り組み

 さて、富山ではこうした意図の下、常願寺川においてさまざまな砂防の事業が展開された。その典型的な取り組みが、「砂防えん堤(あるいは砂防ダム)」を作る、というものだった。  谷あいにある川に作る小さなダムのようなものが砂防えん堤なのだが、その目的は、通常のダムのように水を貯めるのではない。それはあくまでも「流れてくる砂を貯めるためのダム」なのである。  しかも砂を貯めておけば、川の底の「勾配」も緩やかになる。そうなると砂が流れていくスピードが抑制でき、下流側に流れていく砂の量をさらに抑止することができる。  こうやってダブルの効果で砂の流下を抑止していくのが、砂防えん堤である。  富山ではこうした砂防えん堤を、ピーク時(昭和40年頃から平成初頭頃まで)には、年間2〜3基ずつ整備していった。  また、これと並行して行われたのが「床とこ固かため工」である。これは、川の底をコンクリート等で固めてしまう工事だ。  これによって、川底の砂が流れていかないようにする。と同時に、「階段状」にすることで川の底の「勾配を緩やか」にする。  こうすることで、砂が流れていく速度を低下させるわけである。この床固め工はピーク時には毎年10カ所程度ずつ進められていった。  常願寺川ではこうした「砂防」の取り組みを通して土砂の移動が最小化されていき、近年になってからはかつてのような洪水リスクが激減していったのである。  しかも、かつて地震で起きた山崩れで谷底に貯まった大量の土砂も、この砂防の取り組みによって土砂流出が抑制され安定化したことで、「緑に覆われた風景」に変わろうとしているという。  こうして、富山の「砂防」は、富山市を守ると同時に、立山連峰の緑をさらに豊かなものへと変えていったのである。    まさに砂防は「富山」という一つの地域を深い部分で変化させていったのであり、砂防の取り組み全体が「富山」そのものを改変させた一つの大きなイノベーションだったのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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