地方再生の街路イノベーション:「クルマ車線」を削って賑わう京都・四条通3

道路空間の再配置という街路イノベーション

 そんな中、都市のど真ん中の、自動車にとって重要な「幹線道路」の車線を削り、そこを歩行者に開放し、実際に、賑わいが拡大するというイノベーティブ事例がようやく一つ実現されている。  京都市の「四条通」の歩道拡幅事業(あるいは、道路空間再配置事業)だ。  四条通と言えば、京都市の都心部のど真ん中にある一番の目抜き通り。大丸や髙島屋などの百貨店や、ヴィトンやアルマーニなどの高級ブランドの路面店が立ち並ぶ。  先にも紹介した「祇園祭」でも最も中心となる、京都の「顔」とも言えるメインストリートだ。  この道路はかつて、道路の両脇の一部を歩道にして、その間の「片側二車線」が車道という、どこにでもある普通の構造だった。  その「歩道」の幅はかつては3.5m。これが普通の通りなら、それだけの幅があれば十分だということだったが、やはりここは京都市のメインストリート。それだけでは人がごった返し、「歩きづらさ」が際立っていた。  そんな中、京都市は、「自動車の車道を一車線削り、その空間を使って歩道を広げる工事」を行い、歩道は倍近くの6.5mにまで広げられた。  その結果、四条通は、以前に比べてグンと歩きやすくなった。  例えば、新聞では、「以前は人にぶつかりそうで子連れで歩きにくかった。  今日は店をのぞきながら、ぶらぶら買い物ができた」(四条通でベビーカーを押していた40代の夫婦)等という声が紹介されていたが、さまざまな歩行者が、さまざまな立場でこうした「歩きやすさ」を感じていた。  筆者ももちろんその一人で、歩道拡幅後にはじめて四条通を歩いた時は、昔から何十年も歩き続けてきたその道路空間がそれまでとは打って変わって「歩きやすく」なっていたのには、軽い感動を味わった。  ただし、歩道拡幅の効果は、それだけにとどまらない。結果、より多くの人々が四条通を訪れるようになったのだ。歩行者調査によれば、毎月の歩行者は、1~2割程度増加している結果となっている。  そして、歩行者を対象とした聞き取り調査によれば、整備前と比較して「賑わいを感じるようになったか」の質問に「はい」と答えたのが63%だった。その主たる理由はやはり、「人が多くなった」というものだ。  言うまでもなく、歩行者が増えれば、沿道の商店での消費額もそれにつれて増える。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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