地方再生の街路イノベーション:「クルマ車線」を削って賑わう京都・四条通4

道路空間の再配置という街路イノベーション

 だから、四条通の「クルマの一部締め出し」工事は、歩行者にとって四条通をより「魅力的」なものにバージョンアップさせ、四条通の賑わいをさらに増進し、それを通して、京都の都心部の経済活性化に貢献したのである。  実際、歩道拡幅が行われた下京区の商業地の地下工事価格の上昇率は、拡幅前の2015年から拡幅後のその翌年にかけて、2.61倍(3.1%→8.1%)に拡大している。  この拡大率は、京都市内全体の2.17倍(2.3%→5.0%)に比して大きい。つまり、歩道拡幅工事が京都市内の資産価値の向上に寄与しているわけだ。

「四条通の歩道拡幅」による混乱は一時期だけ

 このように、この四条通の街路空間の再配分事業は大いなる成功を収めたのだが、この調整過程で最大の懸念材料だったのが、「四条通の車線が減って、大渋滞が起こるのではないか?」という点だった。  そもそも四条通と言えば、京都市の道路ネットワークを構成する、都心ど真ん中の主要幹線道路の一つ。そんな重要な道路の車線が半分になる、ということで、誰もが大渋滞が起こるだろうと危惧していたのである。  実際、工事が始められて約5カ月が経過した2015年の3月~4月頃、京都市外から大量の「花見客」が訪れたことで、四条通は大混雑に陥った。  京都市民は四条通の拡幅工事のことをよく知っており、できるだけ四条通を使わないようにしていた一方、市外からの観光客はそれを知らなかったのだ。  結果、市バスのデータによれば、最も酷い時には、通常11分の区間で48分かかってしまうほどの混雑となる。  これに対して、もともと「車線を削れば、大混乱に陥るのでは?」という潜在的な不安を感じていた世論が「やっぱり! それ見たことか!!」とばかり一斉に行政批判を始めた。  例えば、メディアでは連日、『四条通拡幅工事で慢性的渋滞』『「悪夢」の渋滞』(産経新聞)、『歩道拡幅事業で渋滞に…地元民は渋い顔』(週刊ポスト)、『〝四条通〟に怒る市民「門川市長の失政だ」』(京都民報)などという調子で、行政を強く非難する記事を掲載した。  ただしそんな混乱は、花見シーズンやゴールデンウィークが終わる頃には見られなくなった。つまりその混乱は、観光客が急に増えたために生じた一時的現象に過ぎなかったわけだ。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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