地方再生の街路イノベーション:「クルマ車線」を削って賑わう京都・四条通6

「消滅交通」はどこに消えたのかと言えば― ― 「公共交通利用者」となった

 一般に、道路が削られることで交通量が縮小される現象は、「消滅交通」(disappearing traffic)と言われる。これは、道路がつくられることで交通量が新しく湧き出てくる「誘発交通」(induced traffic)とは正反対のもので、世界中の、道路の削減によって観測される、一般的な現象だ。  では、かつて四条通を通っていた大量のクルマ(かつての交通量の実に4割)は、一体どこに行ってしまったのか?  真っ先に考えられるのは、四条通と並行して走る他の道路(五条通や御池通)などに迂回している、という可能性だが、そういう変化は必ずしも支配的だとは考えられない。  先に指摘したように、それらの道路でも、かつてより1、2割減少しているからだ。さらに考えられるのが、「クルマで来にくいから、もう四条界隈に来ることをやめた」という可能性だ。  しかし、先にも紹介したように、この四条界隈に訪れる人たちの数自体は、歩道拡幅以後「増えている」。だから、「来なくなった方」が大量にいるとも考えにくい。  そうなると、あと考えられるのは、他の手段、例えば電車やバスで来るようになった、という可能性だ。  実際、拡幅工事前に、四条界隈を訪れた人々を対象とした調査では、クルマで訪れた人の割合は「8%」であったが、拡幅後にはそれが「5%」にまで縮小している。  これは、事前の0.63倍、つまり、4割弱も縮小しているのである。これは、四条通の交通量の縮小に、ほぼ等しい縮小率だ。  一方で、バス・電車等の公共交通のシェアは、拡幅前は79%であったところ、拡幅後には83%へと拡大している。  すなわち、クルマが減って公共交通が増える、という結果になったわけである。  以上のデータが示しているのは、四条通にクルマで訪れていた多くの人々が、道路車線の削減に対応するために、クルマから公共交通へと乗り換えて四条界隈に訪れるようになったのであり、だからこそ歩道拡幅後も混雑は生じなかったという実態である。  例えば、歩道拡幅からおおよそ2年が経過した頃の四条通の様子を報道する京都新聞には、「四条通は混むと聞いたので、電車で来るようになった。荷物を運ぶ苦労はあるけど、時間の節約になります」(草津市から訪れた51歳の主婦)という声が掲載されていたが、こうした声に象徴される多くの方々が、「クルマをやめて、電車で来るようになる」というモーダルシフトを実際に行ったのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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