地方再生の街路イノベーション:「クルマ車線」を削って賑わう京都・四条通8
地域・エリアの実情に合わせた街路イノベーションを
「街の再生」は、全国各地で喫緊の課題となっている。そして、そのためのイノベーションが今、真剣に求められている。 そんな中で、「歩行者天国」や「トランジットモール化」「歩道拡幅」を含めた「道路空間の再配分」を通した「道路からのクルマの締め出し」は、有望な対策の一つなのである。 ここでは京都の四条通の「歩道拡幅」事業を詳しく述べたが、クルマを完全に締め出す「歩行者天国」や「トランジットモール」などのより抜本的な対策を打てば、街の賑わいが一気に拡大する都市は、全国各地に潜在していることは間違いない。 そもそも、「都心・まちなか」は、大量の人々が訪れる場所だ。 そんな場所に、一人の人間を運ぶのに広い面積を使ってしまう「クルマ」を使えば、不効率極まりない。都心で渋滞が起こるのも当たり前なのだ。 そんな「都心・まちなか」には、コンパクトな面積で多くの人々を運ぶことができる公共交通(LRTやバス、鉄道)がふさわしいのである。 だから、クルマは「都市間」や「郊外」など、都心部以外のエリアで必要不可欠な手段であったとしても、都心部においては(物流や緊急車両などの特殊需要を除けば)、公共交通の重要性を強調することが得策なのだ。 この「自明の理」を踏まえるなら、四条通のような「道路空間の再配分事業」を、柔軟な姿勢でさまざまな都市で進めていくことが今、地方再生のためにも強く求められているのである。 しかも本稿で指摘したように、クルマの車線を削っても渋滞の発生などによる混乱は、現実にはほとんど生じないことが実証的にわかっている。 そうである以上、それぞれの都市の現場の実情を十二分に踏まえながら、本稿で紹介した街路イノベーションを柔軟に採用するか否かは、「道路はクルマのものだ」という固定観念を乗り越えることができるか否かにかかっていると言うことができよう。 本稿がそうした理性的な判断に基づく、柔軟な「道路事業」「公共交通事業」の進展に寄与することを、心から祈念したい。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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