食産業インフラ・イノベーションが日本を救う3

「食料自給率」の向上は、平時における「経済成長」のためにも不可欠

 実際、日本の食料自給率が低いがゆえに、大量の「農産物」を輸入している。その輸入額は、まさに「世界一」。農産品の純輸入額(輸入と輸出の差額)は、平成27年時点で約6.2兆円、水産品の純輸入額は同時点で1.4兆円だ。  つまり日本人は今、自分たちの食料を自分では作れないからと言って、毎年毎年「約8兆円(7.6兆円)」もの大枚をはたいて外国の漁師や農家の雇用創出と所得拡大にせっせと貢献しているわけだ。  もし、この8兆円もの大金を、国内産業に振り向けることができれば、国民所得はトータルで(最低でも)8兆円も増加することになるし、乗数効果(誰かが1億円のカネを使えば、その国のGDPはそれ以上に増加する、という効果)を勘案すれば、少なく見積もっても10~15兆円程度の「国民所得」が増えていたはずだ。  つまり、食料自給率が低いがために、日本の国民所得が縮小し、成長率が2〜3%程度縮小してしまっているのが実態なのである。  なお、今の日本の「農業」の国内総生産(GDP)は平成27年時点で4.7兆円、「水産業」のそれは0.7兆円。したがって、両者の合計5.4兆円という水準。  ここで、純輸入額と農水産業GDPの合計値を「農水産物内需」と呼称するなら、この「農水産物内需」に占める国内供給率、つまり「農水産物内需に対する自給率」はわずか41.5%に過ぎない、ということになる(=5.4兆円/(5.4兆円+7.6兆円))。少々煩雑な数字が多くなってしまった。  だが、簡単に言うなら、輸入を減らして国内での生産量を増やし、農水産業における経済的な「自給率」を100%に近づけていくことができるなら、結果的に、10兆円から15兆円もの巨大な経済効果が期待できるのであり、それを通して日本は2〜3%程度さらに成長することが可能となるのである。  つまり、食料自給率の上昇という取り組みは、「まさか」の時の有事対応としての安全保障のために求められているのみでなく、平時における経済成長の視点からも10~15兆円規模という巨大な水準で求められているのである。  だからもしも本当に国益を考えるのなら、日本人は食料自給率の向上をもっと真剣に考えるべきなのである。  逆に言うと、日本人が国益などに頓着しない愚かな民族であればあるほどに、食料自給率に目もくれなくなる。そしてまさに自給率4割というわが国の状態は、そんな後者の状況に置かれていることを、遺憾ながらも暗示しているのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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