食産業インフラ・イノベーションが日本を救う5
「食料自給率の向上」に向けた総合戦略
食料自給率を上げるためには、別の「戦略」を具体的に見ていこう。(自給率向上ソフト戦略1:米消費量の増強)
米の自給率は、現時点において99%。ところが、米消費量は近年激減しており、この半世紀の間に半分程度にまで凋落している。 これが、自給率低下をもたらす主要因の一つとなっているのであり、したがって米消費量を増やすことが自ずと自給率を上げることになる。(自給率向上ソフト戦略2:野菜消費量の増強)
米に次いで高い自給率を誇る農水産品は、「野菜」である。野菜は、たまねぎやカボチャなどの保存がある程度きく一部のものを除けば、輸入できず国内調達が基本となっている。だから野菜消費量が増えれば、自ずと自給率が向上する。(自給率向上ソフト戦略3:食べ残しの低減)
重量ベースで言うと、わが国は5500万tの食料を輸入しながら、その三分の一にもあたる1800万tも廃棄しているのが実態だ。捨てるくらいなら買わなければいい、というのは至って自然な考え方である。 したがって、個々人の食べ残しを減らす努力を促すとともに、コンビニ等での期限切れ食料廃棄などについて対策を施し、食料廃棄量を減らすことで、自ずと自給率は高まる(単純計算では、それだけで自給率は5割程度にまで回復する)。 また、以上に加えて、技術開発を通して次のようなソフト戦略も効果的だ。(自給率向上ソフト戦略4:米粉の利活用の拡大)
過去半世紀の間、米消費量が激減しているが、パンや麺類の普及に伴って小麦消費量は横ばい、ないしは微増の状況にある。 しかし、米から作った「米粉」もまた、麺類やパンの加工に活用可能であるばかりでなく、近年健康の視点から注目されている「グルテンフリー」である点やその独特の食感から根強い人気を誇っている。 ただし今のところコストが輸入小麦よりも概して高価であるため、米粉シェアは限定的であるが、このコストの問題がクリアできればさらなるシェア拡大が期待でき、食料自給率の大きな向上が期待できる。国産農水産品の増強に向けて
このようなソフト施策は重要ではあるが、自給率向上においては国産農水産品の生産量の増強が重要な意味を持つことは論を俟たない。 そのためには無論、総合的な対策が必要となるが、それら対策すべての「基盤」となるのが「食産業インフラ」の形成である。 つまり、日本の各地の国土を、豊かな農水産物を生み出す地へと改良していく、という「国土のイノベーション」投資が、食料自給率向上にとって必要不可欠なのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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