食産業インフラ・イノベーションが日本を救う8

食産業インフラ・イノベーション3 : 水産品生産力の増強

 以上、農業における対策を紹介したが、より深刻なのが水産業だ。先に紹介した経済的な「自給率」を農水産業GDPと農水産品輸入額から求めると、農業のそれは57%(=6.2兆円/(6.2兆円+4.7兆円))だが、水産業については33%(=0.7兆円/(0.7兆円+1.4兆円))しかない。  しかも、わが国はかつて1980年頃までは、水産品の自給率もほぼ100%であった。日本はかつて、世界有数の水産業大国だったわけである。  しかしそれ以後水産品の輸入量が増大していくと同時に、国内の水産品の取れ高が減少していき、わずか40年弱の間に今の状況にまで自給率が極端に低迷してしまったのである。  そもそも、日本近海には豊富な水産資源があり、水産業の能力を増強すれば、自給率を再び向上させることは何も難しいことではない。  しかし現在では、諸外国からの「安い」水産品に対する競争力を確保することが不可欠である。そのためには、可能な限り、効率的に大量の魚介類を定常的に獲り続けることができる状況を確保することが必要である。  そのためにとりわけ効果的かつイノベーティブな取り組みが、マウンド礁(人工海底山脈)の整備だ。これは、効果的な地点を選択した上で海底に巨大な文字通りの「人工山脈」を作り、底層にある豊富な栄養塩を上層に供給する流れを人工的に創出する。  そうすることで、プランクトンを大量に発生させ、それを通して、その海域に生息する魚介類を一気に増加させるという取り組みだ。  これはすでに、長崎県の五島列島沖に整備されており、大きな効果が確認されている。今後、こうした抜本的な漁場イノベーションが全国的に展開されれば、日本の水産業の生産力が抜本的に向上していくこととなろう。  またこれにあわせて、漁港の機能集約・大型・高度化も漁獲高増強にあたって重要である。  水産大国日本には、全国各地に大小さまざまな漁港が存在する。ただし、国際競争力を向上していくためには、必要に応じて陸揚げや市場等の機能を集約化し、施設規模を大型化(大型漁船に対応した岸壁の整備など)する。  それと同時に衛生面や安全性や流通、加工プロセスにも配慮しつつ各種施設を高度化していくための「投資」を図ることも重要である。  さらにそれらにあわせて漁船自体も大型化していけば、漁業生産性を上げていくことも可能となる。例えば島根県和江漁港では四つの市場の統合にあわせた荷さばき所等の施設を整備する取り組みが進められたが、こうした事例を全国的に展開していくことも重要な漁港インフラのイノベーションとなろう。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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