地域イノベーションを導く「リアル・どこでもドア」:高速道路のストック効果3

高速道路は地域を根底から変える「地域イノベーション」を導く

 これらもまた、先に紹介した関東の圏央道が通ったことによる効果と同様、現代版の「リアル・どこでもドア」としての高速道路ができあがったことで、その土地の意味が抜本的に変わり、マーケットや社会から見た価値が抜本的に上昇し、それを通して多様な大量の民間投資を引き出したことを意味しているのである。  つまり高速道路は、その土地・土地の意味や構造と深い部分で作り替える、抜本的な「地域イノベーション」をもたらす巨大な力を持ち合わせているのである。

高速道路で「商業」も「工業」も大きく発展する

 このように、高速道路の整備は、その沿線地域への「行きやすさ」(アクセシビリティ)を高め、それを通して「社会的、経済的な意味」を抜本的に組み替える「地域イノベーション」をもたらす。  結果、その土地の「価値」が抜本的に高まり、それらを通して民間投資が促され、経済活動、社会活動が活性化し、最終的に定住人口が増えていくのである。  こうしたことは、以上に示した個別的な事例からだけでなく、「網羅的な統計データ」からさらに確実な形で確認することができる。  例えば、日本全国の過去「25年」の間の「商業成長率(商業年間販売額の成長率)」という指標から見に出せることは、高速道路に近いところほど、商業成長率が高く、離れたところほど低いのである。  その傾向は、高速道路までの所要時間別に、商業成長率の平均値を求めた表を見れば、よりはっきりと分かる。  この指標が示すところでは、高速道路から遠いところ(30分以上離れたところ)の成長率は「8%」しかないものの、高速道路に近づけば近づくほど、高い成長率が見られるようになっていく。  そして高速道路のインターチェンジまで10分未満の地域では、実にその11倍以上もの92%の成長率を示している。  これは要するに、高速道路が作られればその沿線に商業の立地が進むと同時に、大量の客がクルマで訪れるようになり、商業活動が抜本的に活性化していくことを示している。  高速道路インターチェンジ周辺は、集客の点からも物流コストの点からも有利であることから、商業立地の民間投資が促進されているのであり、その実態がこれらのデータに現れているのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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