地域イノベーションを導く「リアル・どこでもドア」:高速道路のストック効果7
北海道の衰退を導いた、「青函道路」の不在
結果、北海道だけには、(離島を除く)すべての地域でつくることができる「リアル・どこでもドア」を作りあげることができなくなっているのであり、これが、北海道の商工業の激しい衰退を導いているのである。 「商業年間販売額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」、および「製造品出荷額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」は、さながら「指に糸を強く巻き付ければ指先に血流が十分に届かず紫色に変色してしまう」現象のように、青函道路が不在のために北海道に物流が十分に届かず、どす黒く変色し衰退してしまっている状況を示しているわけである。 そうである以上、北海道の開発や発展というイノベーションをもたらすためには青函道路の建設こそが求められているのである。交通インフラ整備は、地方創生の切り札である
高速道路というインフラは、ネットワークを通して全国の主要都市や港とを高速で結び付ける「リアル・どこでもドア」のような存在であるという、この一点を踏まえれば、高速道路を作った沿線の土地が開発され、商業、工業が発展し、地域そのものが根底から変質する地域イノベーションが導かれるのは、至って当たり前のことである。 ここで紹介した実際の道路沿線の工業団地やアウトレット開発の実例や、商工業の成長率と道路整備との関係を示すデータは、その「当たり前のこと」を「当たり前」のように明らかにするものであったと言うことができるであろう。 そうである以上、もしも日本海側の諸地域や北海道等での「地方創生」を目指すのなら、人の流れ(人流)に決定的な影響をもたらす新幹線ネットワークに加えて、「物流」を決定づける高速道路のネットワークを、それぞれの地域で拡充していくことが何よりも重要であることは、何人たりとも否定しがたい「真実」なのだ。 一人でも多くの国民がこの真実を認識し、交通による地域イノベーションを通した「地方創生」が大きな世論の後押しの下で本格的に進められんことを、心から祈念したい。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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