三陸鉄道・南リアス線運行部長インタビュー「三鉄が果たす役割が、これから試される」

「三鉄に乗りたい」――。どちらかが言いだしたか、本誌『週刊SPA!』連載「週刊チキーーダ!」を担当するエコノミストの飯田泰之氏と評論家・荻上チキ氏の2人が、三陸鉄道縦断の旅に出た。その様子は、週刊SPA!7月1・8日合併号をご覧いただくとして、本誌では一部しか紹介しきれなかった、三陸鉄道南リアス線運行部長・吉田哲氏へのインタビューをここに紹介する。

三鉄車両荻上: 4月、南リアス線の釜石-吉浜間、北リアス線の小本-田野畑間が再開し、「全線復旧」を果たされました。その様子を取材した知り合いのメディア関係者からは、「まるで山手線のように混んでいた」とも聞いています。

まずは、「復旧」ということへの思いをお伺いできますか。

吉田哲氏

吉田哲氏●三陸鉄道南リアス線運行部長。運行部長としての仕事のほか、メディアの対応、運転業務まで行う

吉田:全線が運行再開となり、「復旧」を果たしましたけど、むしろ、気持ちとしては、「復興」のスタートには立ったという思いが強いですね。

というのも、北リアス線は、震災の5日後に久慈-陸中野田間で運行を再開し、その後も区間毎でつないでいくことができたのに対し、南リアス線は震災の被害が大きく、2年間、ずっと走ることができなかったんです。

それがようやく、昨年4月3日に盛から吉浜まで一部再開ができた。一部とはいえ、ようやく列車を走らせることができた、というのは、我々社員や地元の方々にとっては、やはり感慨深いものがありました。

全線が開通した今春は、諸手をあげて万歳というよりは、スタートに立ち、今後のことを思いながら、決意を新たにしたというのが、正直なところです。

荻上:今後の課題面でいうと、「震災以前」に戻しただけでは、そもそも抱えていた沿線住民の高齢化や利用者の減少など、もともとの課題も解決できていない、というのが大きいんですか。

吉田:乗車されてご覧になったと思うのですが、駅前はほとんど変わっていない状態です。がれきはないけれど、そこに、家が建っているのか? 商店街が戻ってきているのか? といえば、それはなされていない。そのなかで三陸鉄道は3年で復旧しましたけれど、これからが大変で大切なときだと思っています。地域振興への貢献が、これからも三陸鉄道が果たす重要な役割だと思います。

荻上:この3年間で鉄道会社としてありがたかった支援というのはありますか?

吉田:三陸鉄道が地元の足の役割を果たしていたなかで、高校生の方や高齢者の方、病院に通う方、そういう方々にとっては、本当に不便な2年間を過ごさせてしまった。それに対して、「早く復旧させてね」といった支援や応援の声は多く、地元の方々だけでなく、全国の方々から暖かいご声援をいただきました。

全国と言いましたけど、クウェート国のご支援でやっと車両を揃えることができましたし、そういったことを考えると世界の方々からのご支援が我々の力となりました。

『あまちゃん』に登場

久慈駅前には、今も『あまちゃん』に登場した看板が。『あまちゃん』聖地巡礼には欠かせない久慈駅

荻上: 震災以降、『あまちゃん』だけではなく、特にマンガやルポ、ドキュメンタリー番組での映像化など、三陸鉄道が取り上げられることが圧倒的に増えましたよね。いわば、三鉄が「物語化」された3年間ですが、それについてはどう思っていますか?

吉田:三陸鉄道は広告宣伝費に予算をかけられないので、取材に来て下さるメディアさんすべてに対応する。新聞、ラジオ、テレビ、雑誌、取材はすべて受けています。それが全国発信されることによって、三陸鉄道を知っていただくことになるという考えなのですが、それ以上に、地元の様子を伝えることができるというのがあるんですね。

震災を風化させたくないですし、沿線の様子や情報を発信することができるということで、我々は取材を受けていますし、当然、これからもそうしていかなくてはならないと考えています。

それが広がって、全国からお客様がいらしてくれるのは、我々にとっても有り難いことですし、地元の方々にとっても有り難いことだと思っています。

飯田: マスメディア=外から人を呼ぶというのは確かですが、それだけにはとどまらない。「全国メディアで取り上げられた」というのは、地元でも評判になりますからね。

吉田:また、地元の方々もお客様が全国からいらっしゃることによって、刺激を受けて、いろいろな商品開発をしていく。相乗効果になって地域の活性化に繋がっていくと思います。

荻上:取り上げられ方で、「ちょっとそれは」 という報じ方はありましたか?

吉田:特に、そういうことはありませんでしたが、印象に残っているという意味では、震災の1~2か月後くらいにいらしたあるテレビ局のカメラマンの方が、「被災地や被災した人をカメラで撮っているけれど、撮られている人はどう思うんだろう」と葛藤されている方がいました。私からは、撮られるのがイヤな方も当然いらっしゃるので、一声かけて、取材OKであれば、撮って、この現状を伝えてくださいとお話しました。メディアの方々も、自問しながらやっていることを知り、取材する側、される側お互いに辛い思いをしているのだなと胸が痛くなりました。

⇒【Vol.2】「地方路線だからこその自由な企画力」へ続く
http://nikkan-spa.jp/668826


【飯田泰之氏】
いいだやすゆき●75年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部准教授。『情報満載ライブショー モーニングバード』など、テレビや雑誌等でも活躍。著書に『思考をみがく経済学』『図解 ゼロからわかる経済政策』。共著に『夜の経済学』『エドノミクス』などがある

【荻上チキ氏】
おぎうえちき●81年生まれ。評論家。『シノドス』編集長。毎週月~金曜、22時から『荻上チキ session-22』(TBSラジオ)に生放送出演中。著書に、『未来をつくる権利』『彼女たちの売春(ワリキリ)』などがある

<構成/鈴木靖子 取材コーディネイト/土方剛史>

週刊SPA!7/1・8号(6/24発売)

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