エンタメ

「こんなに嫉妬と恨みを書くってことはない」麒麟・川島『プロレタリア芸人』を推薦

お笑いコンビ・ソラシドの本坊元児の自伝的小説『プロレタリア芸人』(扶桑社)が出版された。それを記念するトークイベントが2月21日、東京・下北沢の本屋B&Bにて行われた。出演したのは、著者である本坊と、その同期芸人である麒麟の川島明。さらに、当日飛び入り参加のサプライズゲストとして、同じく彼らの同期芸人であるアジアンの馬場園梓も登場。昔から付き合いの深い3人が、和気あいあいとしたトークを繰り広げた。
プロレタリア芸人

3人は大阪NSC20期生。昔を振り返りながら爆笑トークが繰り広げられた

 冒頭から本坊は、「面白い話があるんですけど……」と切り出し、インパクトドライバーという工具のマニアックな話を披露。インパクトドライバーの進化の歴史を延々と語り、それが大工さんの間でなぜ「充電」という名前で呼ばれているのか、という豆知識に落ち着く。最後まで話を聞いた川島は「それをよく『面白い話』っていうスタートダッシュきめてくれたな……」とあきれる。  さらに、川島は本の中での自分の描かれ方が気に入らないと本坊に食ってかかる。 「俺、なんかスネ夫みたいになってるやん」  本の中では、川島の家で本坊以外の芸人がゲームに夢中になってしまい、そのゲーム機を持っていない本坊が仲間はずれになってしまうというシーンがある。その言い分を聞いた本坊が客席に向かって「でもね、読んで嫌な感じしました?」と問いかけたところ、川島はすかさず「いや、俺が嫌やった、って言うてるやん!」とツッコんだ。
プロレタリア芸人

芸人仲間からも絶賛の声が多数寄せられる『プロレタリア芸人』。「芸人と建設業の方たちに読んで欲しいです」

 一方、馬場園はものすごく優しい人として描かれている。馬場園から見た本坊は「ほっとかれへんオーラが出てる」。確かに、同期の2人と話している本坊はリラックスしきっていて、小さい子供のようだった。  馬場園は、飲みの席で本坊に「馬場ちゃん、地震来たら絶対、俺の家、見に来てな」と言われたことがあるという。当時、本坊は狭いワンルームの部屋に住んでいて、大きな地震が起こったら「ええ感じで」冷蔵庫が頭の上に落ちてくる状態だった。馬場園はそうやって甘えてくる本坊を心配せずにはいられない。  その後も、本坊が渋谷ヒカリエの建設現場の作業中にUFOを見た話、毎日同じ弁当の写真画像をツイッターにアップしていた話、ラーメンを頭からかぶった話など、世にも奇妙なエピソードが続き、マイペースな本坊を川島、馬場園と観客が温かく見守るような時間が過ぎていく。約1時間半のイベントで、満員の会場は終始大きな笑いに包まれていた。 <『プロレタリア芸人』推薦コメント:麒麟・川島明より> ロックな本やなと思いますね。音楽じゃない「目で見るロック」という感じ。15年芸人やってきて、こんなに嫉妬と恨み辛みを赤裸々に書くっていう本はまあ、他にないですよね。普通だったら、もうちょっと丁寧に文章を分かりやすくしたり説明したりするところを、そのまんま生のものを書いているので、読みにくいって思う部分もあるかもしれないですけど、それが読んだ後に引っかかってくるんです。これがかっこつけてない人間なんやな、って。ほんまに腹抱えて笑いました。いい本です。 <『プロレタリア芸人』推薦コメント:アジアン・馬場園梓より> いろんなバイトがある中で、あえてつらい力仕事を選び、あげく文句をぶちまけるめちゃくちゃなやつですが、皆様も母性本能をくすぐられると思うので、ぜひ手にとって読んでいただいて、墓入るまで面倒見てあげてください。お願いします。
しおり

イベント前日、麒麟・川島や馬場園、ネゴシックスとともに手作りした特製しおりが来場者に贈られた。自前の釘入り!

<取材・文/ラリー遠田 撮影/ならこ>
プロレタリア芸人

肉体労働現場のリアルでディープなエピソードを詰め込んだ珠玉の一冊

おすすめ記事
ハッシュタグ