フツーの若者が“億”を稼ぐ方法を謎の老人が指南――連続投資小説「俺から目線」

 メルマガ配信サービス「まぐまぐ」創業者の大川弘一。ITビジネス黎明期から会社を運営。子会社の日本最短上場、元役員の訴訟問題など、ビジネスの酸いも甘いも知り尽くした男が、話題の企業を始め、世に氾濫する時事・経済ニュースの“本質”を独自の視点で解析する――という名目で始まりながらも“出たとこ勝負”がモットーの本連載。急遽、新シリーズの発足が決定する!

大川弘一の「俺から目線」〈第6回 どうしよう会議〉

 みなさまこんにゃちわ。大川です。

 だいぶ涼しくなりましたね。

 様々な企業を調べ倒してきたこのコーナー。

 第1回はマクドナルド、第2回はシャープと、逆境にある会社の復活方法をたくさん勉強してまいりました。

 そして先日、担当さんと次のテーマについて「どうしよう会議」をしておりました。

「つぎ、何書きましょうかね」
「海外ドラマ『Breaking Bad』に見る起業との相関性なんかどうですか?」

Breaking Bad
(ストーリー)余命わずかの高校の科学教師、ウォルター・ホワイトが残された家族のために始める危険な副業、それはメス(メタンフェミン)と呼ばれる覚せい剤の精製だった。ウォルターが精製したブルーメスと呼ばれるメスは既成品を遥かに上回る高純度を誇り、たちまち市場を席巻していく――。

Breaking Bad

(ストーリー)余命わずかの高校の科学教師、ウォルター・ホワイトが残された家族のために始める危険な副業、それはメス(メタンフェミン)と呼ばれる覚せい剤の精製だった。ウォルターが精製したブルーメスと呼ばれるメスは既成品を遥かに上回る高純度を誇り、たちまち市場を席巻していくーー。「圧倒的な商品力の大切さと、競合との交渉、M&Aのプロセス、時系列で変わる共同経営者との関係、技術継承、ブランドマネジメント、成長期にあるリテール流通の重要性。ビジネスに重要な要素の何もかもが詰まっております」(大川談)

「ちょっとあの作品は好きすぎて、10回書いてもシーズン1が終わらない気がします」
「そうですか……」

「そのかわり、最近バブルの終わりについてあれこれささやかれているので、経済指標とかではなくて『伊丹十三作品に見るバブル崩壊の予兆』なんてのはどうでしょう」
「最高ですねそれ」
「ね」

 こんな感じでその気になって、書き始めること10時間。ところが、伊丹十三作品に対する思い入れが強すぎる私は、まったく筆が進みません。普段からご出演の俳優さん全員の現在をググりながら、5、6時間かけて伊丹監督の作品を見ているものですから、とてもとてもこの連載に使えそうな軽妙な文章が書けません。

「あのーかくかくしかじか」
「そうですか……」
「なので、『伊丹十三に学ぶバブル崩壊の予兆』は諦めて、とある青年が投資の神様に出会って様々な投資を覚えていく物語というのはどうでしょう。株とか不動産とか、FXとか先物とか」
「それいいですね!」

「サラリーマンカネ太郎」
「ダメです」
「はい」

 理解のある担当さんで本当によかった。

 ということで、「俺から目線」スピンアウト新シリーズ

『おかねのかみさま』

第1回をお送りします。

おかねのかみさま 1989年生まれの健太は26歳。

 大学の入学と同時に上京し、サークルに入り、様々なバイトに明け暮れていた彼は、土日も休まずに友人たちと酒を飲み、勉強もせず、浦島太郎(海底)のような充実した日々を過ごしていた。

 ところが。

 連日の大ジョッキによる乾杯に耐え切れなかった彼の鎖骨は『疲労骨折』という形である夜突然悲鳴を上げ、友人たちが忙しく就職活動に励むころ、彼だけが孤独なリハビリ生活との闘いを強いられるハメになっていた。

「くそう……くそう!本当なら俺も、いまごろ片っ端から大企業を廻り倒して、あることないことリーダーシップを発揮してきたとか言ってたはずなのに……。ちきしょう!こんなことじゃ!バラ色の人生が台無しだ!!!」

 4浪の末にノウサギ経済大学に合格した健太はひと一倍負けん気が強く、彼の手に握られたリハビリ用の中ジョッキからは、滝のような汗が滴り落ちている。

「498,499,…500!ふぅ。ミッションクリア……。さ、まとめサイトでも見るか」


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『謎の36歳デイトレーダーの読み的中-市場パニックで利益40億円』(2015/08/28 ブルームバーグ)
〈多くの投資家が市場の混乱に慌てふためいていた8月24日、先物売りに大量の資金を投じた日本人デイトレーダーは底値をほぼ完璧に見極めていた。さらにツイッターで4万人のフォロワーに対し、打つ手を次々発信していた。持ち高を手じまった時には40億円の利益を得ていたという――〉

「よ、40億……?」

 雷に打たれたような電流が健太の全身を走りぬけ、胃と金玉がちぢこまり、握りしめた手から滑り落ちた中ジョッキが、ゆっくりと畳に弧を描く。

「すげぇ、すげぇよ……俺もやる……、俺も投資やるぞ!!!」

 健太は素直である。

「だけど…何から始めたらいいんだろう…。投資なんて学校で教わらなかったし、株とかむつかしいからわかんないんだよ。勉強も嫌いだしさ、こういうのって、かしこい人だからできるんだろ。俺みたいな『ゆとり』にもわかるように、なんかこう、なんでも教えてくれる神様みたいな人っていないのかな」

「けんたくん」

「!!??だれだおまえ!!!?」

「どうも。おかねのかみさまです。」
「うそつけ!!!クソジジイ!」

 ビックリしたときの健太は口が悪い。

「ほんとだもん」
「証拠を見せてみろ!」
「はい」

 神様はふところから身分証明書を取り出して、健太の前に提示する。

「ど…どうやら本当だな。なんでこんなとこにいるんだよ。どうやって入ったんだ?」
「神様だから」

「そうか。そうだよな。じゃあさ、おかねのかみさまならさ、俺に、投資のやりかたを教えてくれよ。俺もこう、この人みたいにかっこよく40億とか儲けたいんだよ」

「それがひとにものを頼む態度か。と思ってます」
「よろしくおねがいします」

 健太は土下座が得意である。

「よろしい。それでは手伝いましょう。まずはじめに、健太くんおかねもってる?」
「お、おかね?」

「おかねがないなら余命でいいよ。余命でおかねを貸したげる」

「よ、余命って言ったって、俺、どれくらい残ってるかわかんないし……」
「とりあえず今のけんたくんの価値からいうと、1年で100万円貸してあげられるから、半年分くらい借りといたらどうかな。と思ってます。」

「100万!?俺の余命ってそんなもんなの?」
「これからあなたが立派になればなるほど、余命の価値は上がります。だけどもいまのけんたくんはどっからみてもアレなので、まぁそれくらいが妥当かと」

「わ、わかったよ。じゃあ…、半年で」
「おっけー。あ、だけどあれだよ。もし君の本来の寿命が半年よりも手前だったら、この半年を換金した瞬間に死んじゃうけどかまわない?」
「なんだよそれ!」

「しょうがないじゃーん。そればっかりはほかの神様の担当だし、僕はおかねのかみさまだから恋愛とか長生きにはまったくちからがないのです。」

「…………」

「どうする?」

「やる。このままリハビリを続けても、どうせつまんない人生だ。就職のタイミングも逃したし、ゆとりだし、失うものもなにもない。俺はここで余命を売って、誰にも負けないカネを手に入れて、最高の人生を過ごす。まずは半年。よろしくお願いします」

「おっけー。じゃあいくね。ピピ。お、大丈夫だね」
「なんだよそのSUICAみたいなの!そんなので余命削っちゃうのかよ!」
「うん。ほら、残高だけ**.*年ってなってるでしょ。じゃあこれ50万円。返さなくていいおかねだけど、がんばってね」

「返さなくていいの?」
「うん。一度減った寿命はもどらないから。好きに投資して。」
「そ、いや、え?じゃあ、なにに投資したらいい? 株? FX? 俺、パチンコしかしないからほんとになんにも知らないんだよ」

「そうかー。そうだな、じゃあ、競馬場でもいこうか」
「ケイバ!?」

次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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