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熊本地震 被災地を観光する人々「熊本の酒で宴会するのと同じ考えです」

 もちろん、このように被災県への観光旅行を強行する観光客に対して、地元の人も好意的だ。4月21日に集中豪雨が襲った翌日、由布院で居酒屋を経営する女性店主は次のように話していた。 「4月16日の本震で、お店のボトルはほとんど割れちゃってね……。それを片付けて、18日から営業を再開したのに、ちっともお客さんが来ない。この時間(20時頃)はいつも地元の人でほぼ満員になるんですよ。けど、来ないから、誰がキープしていたボトルが割れてしまったのかもわからないんです(苦笑)。来てくれるのは、観光客の人だけ。こんなありがたいことはありません」  旅館側の声にならない声を感じ取って、由布院を訪れた人もいた。 「地震の前から由布院の旅館を予約していたんですけど、震災後に旅館の方から『こんな時期なので、当日キャンセルでも構いません』って連絡をもらったんです。けど、電話口で話していると『満足のいくお料理を出せるかわかりませんが……』『余震が続いていますが……』という感じで、その口ぶりから『けど……来てくれたら嬉しい』という気持ちが読み取れた。それで、言い方は悪いんですけど、『行ってあげたい』と思ったんです」(31歳男性)  日本一の温泉地と知られる別府には、黒川や由布院よりも多くの観光客が震災直後から足を運んでいた。 「福岡から鹿児島まで電車で帰る予定が、地震の影響で電車が止まってしまったので、『この際、九州一周観光旅行をしない?』と彼女と相談して、まず別府まで足を延ばしたんです。被災者の迷惑にならないように、このあとは由布院、黒川にも足を運ぶ予定です」(32歳男性)  別府で会った中村さん(23)は大分在住の彼の制止を振り切って足を運んだと話していた。 「彼が大分に住んでいるので、昨日、京都から会いに来たんです。彼は『余震が続いているし、やめとく?』って言ってたんですけど、こんなときだからこそ観光してお金を落としていくほうがいいのかなと」  熊本の益城町など、いまだに多くの被災者が避難所での生活を余儀なくされていることを考えれば、この時期に観光することを心苦しく思う人も少なくないだろう。だが、熊本・大分の旅館関係者はすべからく「気象庁が余震はおさまったと言ってくれない限り、『観光に来て』とは言いにくい」と話していた。「大ぴらに言えないけど、来てほしい」というのが本音だ。観光旅行も立派な復興支援に繋がるのは間違いない。 <取材・文・撮影/池垣完>
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