勝手な想像ですが、この書き込みをした人はとても若いと思います。中学か高校まで。そうじゃなければ、「楽しくて愉快な笑いは自然と出てくる」なんて書けません。人生に対する無知と幼さが見えるのです。 　で、そのことは置いといて、チャリティー番組の時、僕もじつは、番組の盛り上がりが「うるさいな」と感じていました。それは、そこで笑い、喋っていた人達をよく知らず、なんの感情移入もできなかったからです。もし、自分がよく知っている人達が楽しく笑っていたらどうだろうかと僕は考えます。そしたら、不快には思わなかったかもしれないと思うのです。 　九州の地震に対して、さまざまなことを「自粛」すべきかどうか、議論されています。東日本大震災の時の繰り返しにも感じます。あの時、ニュース番組の間で流されたアニメ番組に対して、多くの被災者は歓迎の声を上げました。もう津波の映像を見るのはうんざりなんだと。 　僕は基本的にあらゆる自粛に反対します。それは、経済活動を停滞させ、文化的にもマイナスにしかならないと思っているからです。やめることで何かをしたことになるとは、僕は思わないのです。 　9・11の時、ニューヨーク市長は「野球と演劇の火を消してはならない。この二つはニューヨークが誇るものだ」と自粛を戒めました。多くの市民が死んだ数日後にはコメディーが上演され、みんな笑いました。 　だから、テレビのバラエティーも自粛すべきではないと思います。と書きながら、チャリティーの時にかかってきたあの電話を思い出すのです。自分が本当に落ち込んでいる時、楽しそうな人を見て元気をもらうか、苛立ち殺意さえわくかは、相手との距離かもしれないと思います。ブロードウェイのコメディーをみんな笑ったのは、俳優もまた苦悩していると観客も知っていたからです。 　テレビではしゃぐ人達に対して「あんた達は何も分かってない」と思えば、怒りはわくだろうと思うのです。 ●「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA！にて連載中。連載をまとめた最新刊『この世界はあなたが思うよりはるかに広い』も好評発売中