沈黙を守るホーガンと旧友たちの証言――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第119回
“証言者”あるいは“告発者”として番組に登場してくるのはブルーノ・サンマルチノ、“スーパースター”ビリー・グラハム、デビッド・シュルツといった顔ぶれ――ビンスと絶縁した元WWEスーパースターたち――だった。
サンマルチノは「私が現役だった時代とはプロレスが変わってしまった」とコメントし、グラハムはステロイドの後遺症でボロボロになってしまった体を“証拠”として視聴者に訴えかけた。グラハムは、WWEを相手どりステロイド薬害による損害賠償の訴訟を起こす準備をすすめていた。
シュルツ、ビリー・ジャック・ヘインズらがゲスト出演した“ア・カレント・アフェア”は、ホーガンのステロイド以外の“薬物使用疑惑”を糾弾する番組だった。シュルツは「WWEはコカイン、マリファナ、なんでもあり」とコメントし、あえてホーガンの名を出さずに「いちばんの人気者はドラッグ漬け」という微妙なニュアンスをあやつった。ヘインズは「オレがホーガンのケツに(注射を)打ち、ホーガンがオレのケツに打った」とステロイド投与のディテールを語った。
シュルツはABCの人気ニュースショー“20/20”のプロレス特集番組(1985年2月)でリポーターのジョン・スタッセルを殴打しWWEから解雇されたレスラーで、その後、WWEに対して不当解雇の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。いわゆる80年代型の筋肉マン・レスラーのヘインズもまたWWEを解雇された“元WWEスーパースター”だった。
その証言の信ぴょう性をスクリーニングすることなく、タブロイド・メディアはこぞって“元WWEスーパースター”のコメントを集め、問題発言の数かずをテレビでタレ流した。
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