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従業員が大手ブラック企業を辞められない理由

◆なぜ、「ブラック」とわかっていても会社を辞められないのか 社畜話を聞いているだけで胃が痛くなるような老舗や大手同族ブラック企業の実態だが、それにしても、社員たちは、ここまでツラい目に遭いながらもなぜ会社を抜け出すことができない人が多いのか。そこで、調査してみたところ、まず、彼らの辞められない理由として挙がったのが、“会社のブランド力”。 「某大手商社が親会社だけど、やっぱり親会社の冠はデカい。基本、販売する商品も、特殊すぎて独占状態だから、景気に左右されないし、残る人が多いです」(某商社グループ会社勤務)、「中身がブラックでも、合格実績は落ちていないし、ブランド力がほかの予備校より高い」(大手予備校職員) 老舗ならではのブランド力と安定感。この不景気のなか、そこにすがってしまうのは無理もない話なのか……。 次に挙がったのが「給料が高い・福利厚生がいい」点。というのも、ブラック企業の多くは、仕事のキツさゆえ社員が辞めることを見越し、抑止力として給料や福利厚生を高くするケースも多い。 「SEは長時間労働だし、勤務体系自体はかなりキツイですが、その分給料はいい。ウチの会社では20代でも収入800万円超えはザラです」(某大手IT企業勤務)、「会社の寮は光熱費込みで1万円前後。忙しくても、基本的に土日の休みが守られている。ブラックな面はあるけど福利厚生はよくしてあるので、辞めずに残る人も多いです」(大王製紙元社員) 低賃金・長時間労働が当然のご時世では、いかに労働条件が悪くとも、充実した福利厚生は魅力的。 さらにこうした老舗などは、年功序列や終身雇用制が根づいていることも要因だ。 「老舗企業は土地などの資産も多いし、簡単には潰れない安定性がある。ヤル気は出ないですが、ヘタにリスク犯すより定年までいられることを思えば」(某事務用品メーカー社員) こうした事態に対して、専門家はどう考えているのか。日本の企業に詳しい経済学者の菊地浩之氏はこう分析する。 「老舗・同族企業では外部からのチェックを嫌い、トップ独裁に陥ることが少なくない。また、同族を大事にするあまり、ねじれた人事が行われ、従業員のモチベーションは下がる。ただ、地域を代表する名門企業もあるし、会社勤めは安定している。上の命令を聞けばいいから作業はシンプル。『社畜』と呼ばれても、そこから脱出するのは難しいかもしれませんね」 ツラさに甘んじながらも安定した一生を終えるのがいいのか、思い切って現状から抜け出すべきか。確実な答えは、まだ見えない。 【菊地浩之氏】 経済学者。著書に『日本の15大同族企業』『日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく』などがある 取材・文・撮影/トラディショナルブラック調査隊 イラスト/テラムラリョウ ― 老舗・同族[大手ブラック企業]社員の叫び声【7】 ―
日本の15大同族企業

世襲と脱同族の攻防を15の事例で描き出す

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