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“レッスルマニア8”6万2167人動員――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第123回

 ビンスにはそれなりの“勝算”があった。それはWWEが自社製作のTVショーを毎週10時間以上にわたり全米放映していることだった。マスメディアの機関銃のような“バッシング報道”とシンクロするような、あるいはシンクロしないサムシングとして、WWEはホーガンの“引退ドラマ”をプロデュースした。ホーガンの“生の声”が聞くことができるのはWWEのTVショーだけだった。  4・5“レッスルマニア”の主要カードはホーガン対セッド・ジャスティス、リック・フレアー対“マッチョマン”ランディ・サベージのWWE世界ヘビー級選手権、ロディ・パイパー対ブレット・ハートのインターコンチネンタル選手権の3試合。フレアー対サベージのタイトルマッチは全9試合中、第5試合というまんなかのあたりポジションにラインナップされ、ホーガン対ジャスティスのノンタイトル戦がメインイベントにフィーチャーされていた。  ビンスは“レッスルマニア8”をまえにみずからがインタビュアーとなりホーガンとの“独占会見”をビデオに収録した。ビンスが「“レッスルマニア8”があなたの最後の試合になるというウワサが流れてます」という質問をぶつけると、ホーガンは「わからない。試合が終わったあとのフィーリングを大切にしたい。ファンのみんなにはちゃんと報告する」と答えた。ビンスが「いままでありがとう。サンキュー」といって右手を差し出すと、ホーガンは無言のままビンスと握手を交わした。  ホーガンはビンスの質問に“イエス”とも“ノー”とも答えなかった。これはどうやらホーガン自身の選択だった。ビンスは“リタイア”という単語ではなく“ラストマッチ”という表現をあえて用いたが、このオフィシャル映像がホーガンの“引退会見”をイメージさせるものであったことは明らかだった。ビンスの計算どおり、マスメディアはこんどは“ホーガン引退?”という話題に食いついた。
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ステロイド疑惑は…
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