今の日本に必要な高速道路政策とは?
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
◆1000円高速は愚策だったのか?
清水草一=文
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経済評論家・三橋貴明先生は、デフレ不況下にある現在の日本では、政府が積極財政を取らないことには始まらない、いやそれさえやれば復活できると説く。つまり、麻生首相の「1000円高速」は、不況対策としては“当たり”だったのだ! ま、当たりは当たりでも、それが高速道路である必要があったのかは大いに疑問だが……。
菅内閣は、大震災の復興財源捻出のため、1000円高速と無料化社会実験を6月中にも打ち切るとしている。それが6月のいつなのか、その後の割引をどうするのかはまったく不明。相変わらずの泥縄政権だが、恐らく土日休日にある程度の割引を残す形でお茶を濁すだろう。
しかし、今の時期に政府が増税や値上げをやったんじゃ、復興どころか日本経済は奈落に落ちてしまう!
では、どんな割引が望ましいか。私なりに考えてみた。
まず、人間は限定品に弱い。1000円高速は、土日休日に限定することで、人々の心をあおり立てた。ここを理解する必要がある。
割引対象は、エネルギー効率の高い公共交通機関、鉄道と路線バスを中心にすべきだ。土日休日に限定して、鉄道・路線バスはすべて半額(こども料金を適用)。これなら冷えた消費心理も刺激されて、「鉄道に乗ってどっかに行こう!」となるだろう。鉄道なら指定席が中心だし、混んでも遅延することはない。
実施には、恐らく8000億円/年ほどの予算が必要だ。そんなに出せないなら東北方面に限ってもいい。
高速道路に関しては、ETC限定で混雑しない平日、月に2回の利用(1往復)に限り、最も長く走った料金を無料にする。つまり月に1回までなら、青森に行こうが鹿児島に行こうがタダ。平日に限ることで渋滞も回避できる。自動車業界が、夏場の工場の休みを木金にするそうだし。
鉄道・バスは休日に、クルマは平日に割引を限定することで利用を分散しつつ、「行かないとソン」と思わせる。これらを、日本がデフレ不況から脱出するまで継続する。
三橋先生、いかがでしょうか!?
1000円高速は愚策だったのか? 【結論】
やり方がまずかったにせよ、1000円高速は経済効果のある政策だった。デフレ下にはデフレ下の政策があり、インフレ対策(緊縮財政や増税)は絶対に禁じ手。早く三橋先生に総理大臣になってもらいたい。 ◆SPA! AUTO CLUB Vol.684 1000円高速は愚策だったのか? 今の日本に必要な高速道路政策を再考してみました。先生どうでしょう? 文/清水草一 図版/ミューズグラフィック1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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