[一戸建て⇒マンション購入]にシフトする浦安市民
◆ポスト震災[首都圏不動産選び]の新常識(1)
ミル貝の如く飛び出たマンホール。道路から噴き出た大量の砂や泥。東京からもっとも近い被災地、浦安の惨状は多くのメディアによって報じられてきた。液状化した街のその後はどうなっているのだろうか。
京葉線新浦安駅南口を出て、取材班はもっとも激しい液状化被害に見舞われたと言われる今川地区へ向かった。同地の相場は1坪150万円。まさに浦安市が誇る高級住宅街だったのだが……。
境川に架かる橋を渡ると、果たして景色は一変。明らかにパースがおかしいのである。電柱、家屋、塀など、ことごとく微妙に傾いている。家の軒先には、液状化により噴き出た砂を回収した際の土嚢が高く積み上げられ、単身者向けの賃貸アパートの集合ポストには、ガムテープの封が目立つ。人影はまばらで、目につくのは工事関係者ばかりだ。ポストの新聞を取りに家から出てきた60代の男性に話が聞けた。
「傾きが気になり毎日眠れないよ。水平に戻すためのジャッキアップ工事に800万円かかるが、全壊でも半壊でもないから地震保険が下りないのは本当につらい。新町のほうの高層マンションは基礎工事をしっかりやっているから被害がほとんどないらしくて。それもなんだか割り切れませんよ」
「新町」とは、75~81年までに造成された第二期埋め立て地だ。今川地区などを擁する「中町」は62~75年にかけての第一期埋め立て地である。つまり、古くて地盤が締まっているはずの中町のほうが、新町よりも液状化被害が大きいのである。彼はそんな不満をぶちまけ、寂しそうに傾いた家へと戻っていった。
さらに住宅街を奥へ進むと、他を圧倒する150坪の豪邸の玄関にランニング姿の70代男性の姿が見えた。これだけのお屋敷ともなれば、修繕費用も資産価値の目減り幅も相当なはず。だが、当の本人にはあまり悲壮感がなかった。
「昔、不動産鑑定士をやっていた経験から言うと、浦安の土地は半値くらいでしょう。実際『半値で買いますよ』というブローカーがこの辺をたびたび訪れている。でもそれも今だけのこと。なんたって東京駅まで17分だし、東西線もディズニーランドもある。坪30万円で液状化対策さえやれば、浦安の価値は必ず元に戻りますよ」
こうした被災民の声に対し、地元不動産業者の見解はどうなのだろうか。新浦安駅前のロイヤルハウジング社に見通しを聞いた。
「一戸建てについては売買自体が成立せず、相場ができていない状態です。一方、マンション相場は1割程度の落ち込みで、浦安の賃貸住宅に住んでいた方や、一戸建てで被災した方が、市内のマンション購入に動くケースが増えています。もともと新町は外資系や一流企業の転勤族ファミリーが集まる千葉で一番のハイソなエリア。各ブロックには幼稚園と小中学校が必ずあり、子育てにはベストの環境です。今のイメージダウンは一時的な現象でしょう」
浦安の良さをよく知る市民は、一戸建てを捨て、マンション購入を虎視眈々と狙っている。
取材・文・撮影/野中ツトム(清談社) 高木瑞穂 遠藤るりこ(ビッグアップルインターナショナル) 遠藤修哉・八木康晴(本誌)
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