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ディーゼルの“プロレス開眼”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第177回

 バックランドはインタビュー・シーンで「わたしはブレット・ハートとのタイトルマッチのためにトレーニングを積んできた。ディーゼルと試合をする準備はしていない」とコメント。番組内ではタイトルマッチの試合結果が同日午後9時30分から“900ナンバー”の有料電話サービス(90年代のダイヤルQ2サービスのアメリカ版)で速報配信されることも併せて発表された。中級レベル以上のマニア層はこの時点で王座移動ドラマを“予知”した。  タイトルマッチにはノーDQ(反則裁定なし)、ノー・カウントアウト(場外カウントアウトによる裁定なし)、ノー・サブミッション(ギブアップによる裁定なし)という変則ルールが導入された。バックランドの必殺技はチキンウィング・クロスフェースだから、ノー・サブミッションというルールは明らかに不公平な条件であったことはいうまでもない。  全8試合中、第5試合にラインナップされたバックランド対ディーゼルのタイトルマッチは、わずか8秒という記録的な試合タイムでディーゼルがお得意のジャックナイフ・パワーボムからバックランドをフォール。試合終了のゴングが鳴ったとたん、ハウスショーとしては異例のパイロワーク(花火)が響き渡り、閃光のシャワーがリング上を包み込んだ。“スター誕生”の瞬間だった。  新チャンピオンとなったディーゼルは第8試合(アンダーテイカー対IRS)のまえにもういちどリングに登場し、マイクを手に「このマディソン・スクウェア・ガーデンのリングでチャンピオンになれたのはキミたちのおかげ」とコメント。いかにもベビーフェースらしいスピーチで観客を完全に味方につけた。
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ディーゼルは遅れてきたルーキーだった
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