フリースタイルラップ、“バブル”の功罪と日本語の変化を語る【ダースレイダー×磯部涼】
磯部:一方、取材で川崎の小さなサイファーなんかにも行くのね。そこで感じるのは、バトルがあって、同時にサイファーがあることが重要だと思う。前者が悪口の言い合いなら、後者は連想ゲームでしょう。
ダース:やり取りっていうかね。言葉を拾って繋げるっていう。
磯部:それを通して、バトルも含め、複数でのフリースタイルは共同作業だってことがわかってくる。今はバトルだけが注目されすぎてるんじゃないかな。
ダース:結局、エンターテインメントとしてやるには、そういうものがクローズアップされるからね。
磯部:そこではどうしてもガチさが受けるっていう。実際はそれもルールの中でやってるんだけどね。
ダース:みんながわかってる約束事の中で戦ってかなきゃ、ちょっと危ないっていうのはある。日本の場合、それが暴力沙汰にならないのは運だけな気もする。
磯部:草大会とかでは、これからどうなるかわからないよね。それでも、バトルの魅力によって若い子にラップが浸透したのは確かなわけだけど。
ダース:お笑いブームの頃、学校で箒立てて面白いヤツは漫才やるみたいなことがあったよね。ラップでも同じ状況になってる。頭回るヤツは「お前ラップしたほうがいいんじゃん?」っていうのが選択肢として入ってきてるよね。
磯部:実は日本の文化はもともとラップと相性がいいんだよね。お笑いだってラップに近いところがあるし。というか、ヒップホップはサウス・ブロンクスの文化だけど、ラップ的なものは世界中にある。だから、どこでも根を張る。それがラップの力強さなのかも。
ダース:言葉をいっぱい知ってて、頭の回転が速くて、リズム感がいい人がそれを商売にする場合、今までは芸人になってた。それが今後はラッパーになる可能性も出てくるのかなと。
磯部:実際、芸人にもラップに興味がある人たちが多いでしょう?
ダース:芸人のなかでは、真面目な人ほどラップできなくて、いい加減にアプローチする人のほうがいいラップができる気がする。
磯部:とろサーモン・久保田がバトルに強いのは面白いよね。風俗で呼び込みもやってた人だから。
ダース:あれも言ったらラップだよね。
磯部:ストリートだし。
ダース:噺家とかもラップのグルーヴはあるし、ラップって原理主義者とかマニアだけのものにとどまらない、あらゆる層に浸透する力を持ってると思うよ。
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