更新日:2018年02月09日 20:36
ライフ

胃潰瘍で亡くなった夏目漱石…その病弱だった人生を振り返る

飼い主の珍野苦沙弥は、まんま漱石さんです

 明治33年、漱石は文部省の命令でイギリス留学をします。  その間、神経衰弱はさらに進行し、『漱石発狂』の噂が流れたため予定より早めに帰国。帝大と一高で教鞭をとった漱石でしたが、お堅い授業は不評、叱責した学生が入水自殺という中で神経衰弱は悪化していきます。  そんな時、知人から「小説を書くと気晴らしになり神経衰弱に良い」と勧められ、処女作『吾輩は猫である』を執筆しました。この時漱石は37歳、遅咲きの作家デビューです。  当初、吾輩は猫であるは1回読み切り予定で、俳句雑誌『ホトトギス』に掲載されました。  しかしこれが、予想を超える大好評!結果、全11回の連載作品となるなど、まるで「ジャ○プの読み切り漫画が好評で新連載開始」ってな感じでありました。
夏目漱石旧居跡

夏目漱石旧居跡

 さて、『吾輩は猫である』は、主人公の猫から見た人間観察がキモであります。猫の飼い主は「珍野 苦沙弥(ちんの くしゃみ)」で、中学校の英語教師。性格は偏屈なくせにノイローゼ気味で胃弱、と、まるで漱石自身のことが描かれております。  そして小説の中では胃腸薬を飲む、こんなシーンが……。  彼は胃弱で皮膚の色が淡黄色たんこうしょくを帯びて弾力のない不活溌ふかっぱつな徴候をあらわしている。その癖に大飯を食う。大飯を食った後あとでタカジヤスターゼを飲む。飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これが彼の毎夜繰り返す日課である。(『吾輩は猫である』夏目漱石)  ここに出てきた『タカジヤスターゼ』が胃腸薬なんですね。  成分は唾液などに含まれる消化酵素『アミラーゼ(ジアスターゼ)』で、でんぷんを糖に分解し、炭水化物の消化を助けます。ダイコンやカブなどにも多く含まれています。  タカジアスターゼは明治27年に麹菌からジアスターゼを抽出した「高峰譲吉」が、自分の名字から『タカ』をとり命名し特許取得をしました。そして胃腸薬、消化剤として市販され、胃もたれや胸焼けの薬として使われたのです。小説だけでなく、漱石も実際にタカジアスターゼを使っていたそうです。  ちなみに今でも薬局で買えますので、漱石に憧れている方は、食後にどうぞ♪
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京大のポストも蹴って、職業作家として生きる。が……
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現代医学の観点から、戦国時代の武将の生活習慣や医療環境などを見つめなおしたショートエッセイ集


吾輩は猫である

痛烈・愉快な文明批評の古典的快作

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