胃潰瘍で亡くなった夏目漱石…その病弱だった人生を振り返る
胃潰瘍は、胃酸分泌と粘膜保護作用のバランスが崩れた際に起こります。たいていは粘膜保護作用の低下が原因ですけどね。 またヘリコバクター・ピロリ菌も胃潰瘍の発生に関与しています。防御因子が弱まったところが胃酸にさらされると、そこの粘膜が傷み、欠損。自覚症状としては『胃の不快感や痛み』があります。 潰瘍が深くなるとそこから出血しますし、更に進むと胃に穴が開く(穿孔)こともあります。太い血管に穴が開いた場合は大量出血につながり、その出血は命に関わりますので手術が大原則でした(残念なことに日本初の胃潰瘍手術は漱石の死から2年後)。 わざわざ「でした」という表現を使ったのは昭和57年に登場した「胃酸を抑える薬」により胃潰瘍出血が激減し、今では殆ど手術をしなくてすむようになったからです。 現在は、さらに違う種類の胃薬や、ヘリコバクター・ピロリの除菌療法、内視鏡をつかった止血術もあり、胃潰瘍での死亡は大幅に減少しています。 漱石が作家として活動したのは約12年間。もしも今の胃薬がその時代にあれば、もっともっと多くの作品が読めたことでしょう。 ただし、本気で生死をさまよったからこそ、珠玉の作品が数多残されたとも考えられるでしょうし……うーん、難しい。 イラスト・文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医) <コンテンツ提供/BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)> 【BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)】 日本で初めて歴史をテーマにしたポータルニュースサイト。今回の記事の他、以下のような記事を掲載。 ●真田昌幸の最期は「うつ病」気配が濃厚だった!? 真田幸村の父にして稀代の名将を蝕んだ心の病 ●織田信長が弟・信行を謀殺したのはオキシトシン不足だったから!? ~愛情ホルモンは歴史を動かす~医療が進歩し、胃潰瘍は死の病ではなくなった
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