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「禁煙条例」法制化加速。全国初「神奈川方式」の影響はどうだったのか?

 今回の法制化の流れでは、「一律全面禁煙」となる可能性も否定できないが、果たして、「神奈川方式」の受動喫煙防止条例が施行された直後、県内の飲食業界はどう変わったのか? 神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合の八亀忠勝さんが話す。 「条例が施行された2010年当時は、リーマンショックの直後だったため、正直影響は大きかったですね……。チェーン店などの大型店は資金とスペースがあるからいいですが、30.25坪(100㎡)以上あるお店は、全面禁煙にするか新たに分煙スペースをつくらなければならないので、当然まとまったお金を工面しなければいけなくなる。完全に密閉された仕切りをつくって排出口も確保する必要が出てきますし、冷暖房を禁煙・分煙の両スペースにそれぞれつけたら、工事費だけで1坪当たり400万~500万円かかります。一軒家でしたらすぐに工事できますが、ビルのなかに入った店舗でしたら、契約内容を確認したうえで他店にも配慮して工事を進めなければならない。しかも、分煙スペースができたら店の雰囲気も壊れてしまうので、長らく来てくれていたお客さんが離れてしまうといったこともある。私も泣く泣く1店舗閉めましたが、周りでも50坪以上の店がいくつか廃業しています」  八亀さんが話すように、「神奈川方式」の導入は飲食業界に大きな影響を及ぼしたようだ。市場調査会社の富士経済が、条例施行後の2010年6月からの半年間、神奈川県内にある約3000軒の飲食店に聞き取り調査をしているが、禁煙や分煙の措置を採った居酒屋などの飲食店の売り上げは平均15~20%下落。最大で30%落ち込んだ店もあったという。  2020年に向け、受動喫煙防止の「法制化」の流れは止まらないだろう。だが、経済への影響という面から見ると、「一律全面禁煙」を掲げ法律という枠組みで小規模業者を縛ることに、飲食業界が拒否反応を示すのも十分理解できる。 「やはり、一律全面禁煙を押し付けるのではなく、神奈川県のように小規模店に対しては『努力義務』にとどめてもらいたいと切に願っています。12日に行われた『反対集会』で出された決議も見ましたが、これまで細々とやってきた小さなお店をどうにかして守りたい……という思いが滲み出ていた。いざ法律ができてしまったら、国の名において『禁煙条例』よりも厳しい締め付けになるのは目に見えています。訪日外国人を増やすという意気込みは結構だと思うのですが、神奈川県だけで年間約600億円のタバコ税を確保できているわけですし、法律で取り締まるにしても、小規模店は除外してもらいたい。五輪がくるからと、昔からある小さな喫茶店やマージャン店まで規制するのは、やはり行き過ぎのような気がします」(八亀さん)  果たして、飲食業界に大きな地殻変動が起こるのか? 20日から開かれる通常国会での審議を見守りたい。<取材・文/日刊SPA!取材班>
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