更新日:2022年08月21日 12:50
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第7代大統領 アンドリュー・ジャクソンの「功罪」から読み解くトランプ政権

――国のかたちを変えることにも臆することなく指導力を発揮した点が、民衆に支持されたということか。 西山:民衆ウケという点では、ジャクソンは大統領在任中に「第二合衆国銀行」を潰しています。合衆国憲法のなかには、「政府は貨幣を鋳造する権利を持つ」と書かれていますが、銀行をつくっていいという規定はありません。そこで貨幣をつくるためにまず「第一合衆国銀行」が作られました。最高裁もこれに合憲という判断を出しており、連邦政府は期限付きであればこれを中央造幣局として認めるという流れになっていました。その後、「第一合衆国銀行」は期限が過ぎ失効したのですが、英米戦争で過度なインフレを経験するなど経済が混乱に陥ったため、「第二合衆国銀行」を中央銀行として新たに公認することになります。これは、ある程度成果があったのですが、後に議会がその法案を出した際に、「第二合衆国銀行」は不正と腐敗に塗れたカネ持ちのための銀行だと言って、ジャクソンは拒否権を行使しました。これはいろいろな意味で無茶苦茶な話で、当時大統領が議会の法案に対して拒否権を行使するということは、憲法上の疑義がある場合に限られるという慣例があったのに、それを無視して政治的な理由で拒否したのが一部の民衆に賞賛されました。しかし、それが懸命な策かというと決してそうではなくて、それまでであれば「第二合衆国銀行」の金融政策でアメリカ経済を抑えていたのですが、「第二合衆国銀行」が潰れたことで1837年に一気に大恐慌が起きるのです……。根拠のないポピュリズムに訴えた政策を採用すれば社会不安を起こす可能性があり、現代のトランプもまた民衆ウケに走る可能性は否めないでしょう。もちろん今はメディアも議会の議員もそれなりの情報があるので、そこまで大きなことは起こらないと思いますが……。  就任1か月とたたないにもかかわらず、トランプ政権はすでに大きな混乱を引き起こしているが、200年前のアメリカのリーダーから学ぶべきことは少なくないようだ。 取材・文/山崎 元(本誌)
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移民大国アメリカ

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