“プロレスラー”Mrマクマホン、突然のデビュー――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第289回(1998年編)
ストーンコールドは黒タイツと黒シューズ、黒の革ベストといういつもどおりのコスチュームで、ミスター・マクマホンに変身したビンスは黒のタンクトップと黒のスウェット・パンツというワークアウト用のワードローブで、それぞれメインイベントのリングに登場した。
これがビンスのもうひとつの自我であるミスター・マクマホンの記念すべきデビュー戦であるというオフィシャルなアナウンスメント(あるいはリマインド)が事前になかったせいか、リングサイドのカメラマンもタンクトップ姿で闘うビンスをそれほど積極的に撮影しなかったため、この“試合”のスチール写真はあまり残っていない。
試合開始直前、ビンスがストーンコールドに対して“ハンデ”を要求し、ストーンコールドは右腕を後ろにしばられるハメになったが、いざ試合がはじまろうとした瞬間、こんどはドーゥド・ラブ(ミック・フォーリー)が登場し、十八番マンダブル・クローでビンスをKO。結果的にストーンコールド対ビンスのまさかのシングルマッチは“試合不成立”という消化不良の結末を迎えた。
ストーンコールドとビンスがリング上で向かい合った2時間番組の最終クォーターは6.0パーセント(全米441万4000世帯が視聴)の高視聴率をスコア。この日の“ロウ”は4.63パーセント(1時間めは4.3パーセント、2時間めは4.95パーセント)の平均視聴率をスコアし、同日・同時間帯にオンエアされたWCWの“マンデー・ナイトロ”(3時間番組)の平均視聴率4.34パーセントに0.29パーセントの差をつけた。
“ロウ”の視聴率が“ナイトロ”の視聴率を上回ったのは、1996年6月10日オンエア分の番組以来、じつに83週間(1年10カ月)ぶり。“ナイトロ”のメインイベント、スティング対ケビン・ナッシュのシングルマッチの瞬間視聴率は4.3パーセントという数字だった。ビンスのまさかのプロレスラー転向が“逆転ホームラン”となった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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