更新日:2017年03月02日 14:38
エンタメ

西寺郷太×新垣隆 あえて今“ゴーストライター騒動”を語る――CDが18万枚も売れたのは“聾唖の作曲家”というストーリーがあったから

――スキャンダル以降の嵐のような日々を振り返っていかがですか? 新垣:それ以前の状況が過熱していましたから、とにかくそれを鎮めなければならなかった。告白した段階で既にCDは18万枚も売れてしまっている。コンサートは当然中止になる。一体これから何が起こるのか、恐怖しかありませんでした。 西寺:スキャンダルがあったものの18万枚も売れていたわけですから、新垣さんの作曲した音楽を好きな人が少なからずいたわけですよね。彼らは、今も新垣さんを支持しているんですか? 新垣:中にはいらっしゃいますが、多くはありません。今のファンの方々の多くは、佐村河内名義の楽曲ではなく、騒動をきっかけに新しく自分の音楽を知ってくれた人たちです。そもそも私のやっているクラシック音楽は、1曲が1時間ということもあるようなもので、ポピュラーとは程遠い。つまり、18万枚という数字は、“全聾の作曲家”佐村河内守というストーリーがあってのものなんです。 西寺:(過去の記事を見ながら)これ、すごいですね。「佐村河内守は恐るべき鬼才であり、全員が演奏しながら泣いてた」と書いてあります。「彼の音楽は魔術的でクライマックスシーンの演奏が始まると旋律に涙するスタッフ、奏者までも涙をこらえて弾いている、悪魔の仕業を思わすに十分な光景」って、凄い状態ですね(笑) 「CDが18万枚も売れたのは“聾唖の作曲家”というストーリーがあったから」【西寺郷太×新垣隆 “ゴーストライター騒動”を語る(前篇)】新垣:凄いです(笑) 西寺:普通、褒めるにしてもここまで露骨に褒めないですよね。 新垣:数年後、ゲーム音楽のサントラを彼が出した時、とにかく褒める文章を書いてくれと彼から言われて、全く気が進まないので冴えないものを書きました。「昨今ゲーム音楽のクオリティが問われる中で、これは比較的まともである」みたいな。それが掲載段階では、いつの間にか「神業である!」と変わっているんですよ(笑) 表向きは私が佐村河内氏を推薦している文章ですが、実際は自分の作った曲を自分で激賞しているわけですから、恥ずかしくて本当に顔が真っ赤になりました……。 そもそも佐村河内氏は自分で作曲することができた。これだけでも驚きの事実である。そして徐々に明らかにされていく佐村河内氏と新垣氏の関係性。インタビューはさらに核心へと切り込み、ゴーストライター騒動を巡る知られざる本音が打ち明けられる!(※次回「いつかはバレて破たんする運命だったんです」が近日公開) ●新垣隆(にいがきたかし) 作曲家・ピアニスト。桐朋学園大学音楽学部作曲専攻の非常勤講師時代に佐村河内氏と出会う。後にゴーストライター発覚以降は、自分の名義で精力的に作品を発表している。著書に騒動を受けた自伝『音楽という<真実>』(小学館)がある ●西寺郷太(にしでらごうた) ポップンソウル・バンド「ノーナ・リーヴス」のメイン・ソングライターであり音楽プロデューサー、MC、作家など幅広い分野で活躍。音楽レーベル「GOTOWN RECORDS」主宰。著書に『噂のメロディ・メイカー』(扶桑社刊)『プリンス論』(新潮社刊)など。ノーナ・リーブスの結成20周年記念ベスト盤「POP’N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」は3月8日発売 <取材・文/宮下浩純 撮影/難波雄史(本誌)>
1
2
3
噂のメロディ・メイカー

「ワム!のゴーストライターは日本人だった!?」岡山、倉敷、サンタモニカ、高松etc.総移動距離1万1125kmの果てにたどり着いた“衝撃の真実”とは―膨大な取材と資料をもとに綴った前人未到のノンフィクション風小説。80年代を巡る“洋楽ミステリー”の誕生!


POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES

ノーナ・リーヴス、20周年記念ベスト・アルバム、リリース決定!


音楽という<真実>

ベートーヴェンに憧れて作曲家になった青年は、ある日もうひとりの「ベートヴェン」に出会った。天才作曲家の18年にわたる「ゴースト生活」の真相。

おすすめ記事