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マイナンバー制度の施行で“職場バレ”を恐れるキャバ嬢は辞めたのか?【追跡レポート】

「バレる」うわさが蔓延し、引退ラッシュ

 一方、この3月で職場バレを恐れて、5分の1の掛け持ちキャバ嬢が辞めた店がある。山手線の主要駅にあるキャバクラ「T」だ。この店で働く松井美紀さん(仮名・27歳)は、キャストが辞めた原因は「うわさ」だという。 「去年の冬にマイナンバー関係で辞めたキャストはいたのですが、今年は去年よりも多かったですね。キャストのひとりが、税理士のお客さんに『今年からマイナンバー制度が本格化するから、職場バレするリスクが上がるかも』と言われたという話を待機室でしたんです。それがあっという間に拡散して。

ナンバー入りのキャストが辞めた日は、店前に花がずらりと並んだ(美紀さん提供)

昼職をしながら売り上げ3位をキープしていた子も辞めたので、店にとってはかなりの痛手のはず。店がきちんと説明なりフォローなりしておけば、こんな惨事にはならなかったと思います」

店長はマイナンバーに驚くほど無知

 以前、美紀さんはこの店の店長に確定申告について尋ねたことがある。 「確定申告をしたいので支払調書をくださいと言ったところ、店側が税金を納めているから確定申告は不要だと言われました。支払調書と源泉徴収票の区別も、所得税と住民税の違いも理解していないようだったので、マイナンバーの正しい知識もあるはずがない。雇用側がマイナンバーについてきちんと勉強しておかないと、掛け持ちキャバ嬢はどんどん辞めていくでしょうね」 ⇒【写真】はコチラ(店長からのメール)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1301615

店長からのメールには「確定申告は不要」と書かれていた

区役所に問い合わせてみた

 企業は、税や社会保障の関係書類へのマイナンバーの記載にあたり、従業員や取引先からマイナンバーを取得する必要がある。  先述の加奈さんの場合、副業先のキャバクラにだけマイナンバーを提出していないことになるが、これは法的に問題ないのだろうか。加奈さんの住む東京都T区役所に問い合わせをした。 「基本的には、マイナンバーの提出は必須です。ただ、さまざまな事情によりマイナンバーを提出できないという方もおり、企業によってはマイナンバーを取得していないところもあるようですね。支払額が少ないことや副業であること、雇用契約ではなく委託契約である場合、マイナンバーの提出は関係ありません

結論。とりあえず掛け持ちキャバ嬢は辞めなくてOK

 国税庁のサイトを参照すると、以下のようなQ&Aがある。 Q1-2 従業員や講演料等の支払先等からマイナンバー(個人番号)の提供を受けられない場合、どのように対応すればよいですか。(引用:法定調書に関するQ&A)  この回答によると、企業がマイナンバーの取得をすることは必須だが、提供を受けられない場合、税務署はマイナンバーの記載がない書類を収受するという。  つまり、マイナンバーの取得について努力は必要だが、結果として取得できなくても今の段階では問題がないということになる。  以上を踏まえると、現段階で掛け持ちキャバ嬢が辞める必要性は低いだろう。しかし、先に紹介した通り待機室でかわされたマイナンバーの噂ひとつにより、一気にキャストがいなくなる実例もある。  副業の職場バレは、キャバ嬢に限ったことではない。副業ブームが盛り上がるなか、政府や企業による分かりやすいマイナンバーの説明が求められている。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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