ザ・ロック“ピープルズ・チャンピオン”の孤独――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第321回(2000年編)
キー・フレーズをたくさん発明した。入場テーマ曲のイントロ部分にもなっている“イフ・ユー・スメル・ワット・ザ・ロック・イズ・クッキングIf you smell what the Rock is cooking”は、無理やり訳せば“ロック様の魂の叫びは聞こえるか”“ロック様の妙味を味わえ”。
“ノウ・ユア・ロールKnow your role”は“身分をわきまえろ”“身のほど知らずが”。“キャンディー・アスCandy Ass”は有色人種の視点からみた“白人野郎”。毎週木曜夜のTVショーのタイトル“スマックダウンSmack Down(ぶん殴る)”も、もともとはロックのお気に入りのパンチラインのひとつだった。
“ジャブロニJabroni”は“とるに足らない人間”“負け役”で、“モンキー・クラップMonkey Crap”は“猿のクソ”“サイテーのヤツ”。こういったフレーズの数かずが観客の頭のなかにしっかりとインプットされていった。
リングに登場してくるときのロックは、試合開始のゴングが鳴るまえに必ずコーナーサイドのセカンドロープに飛び乗って、なんともいえない恍惚の表情を浮かべて自己顕示欲をディスプレーする。
試合がはじまるまえからいきなり相手に殴りかかる。試合の組み立てはパンチ、キック、ストンピングが主体で、パンチとキックのあいだに大技がちりばめられている。フェイバリット技はいうまでもなくロックボトムとピープルズ・エルボー。闘い方そのものもまたベビーフェースともヒールともカテゴライズできない。
ロックはすさまじいスピードでアメリカでいちばん有名なプロアスリートのひとりにノシ上がった。テレビをつければ、夜中のトークショーでもMTVのミュージック・ビデオでも番組と番組のあいだのコマーシャルでも、ロックがまゆ毛をつり上げて定番のフレーズをまくしたてているシーンに出くわす。
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