ザ・ロック“ピープルズ・チャンピオン”の孤独――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第321回(2000年編)
TVショー“ロウ・イズ・ウォー”の画面に映し出されるテロップは、きわめてシンプルに“ザ・ロックThe Rock”。そのあとにくるはずのロッキー・メイビアはいつのまにかリングネームからきれいに削除されていた。
“ロッキー”は父ロッキー・ジョンソンのファーストネームで、“メイビア”は祖父ピーター・メイビアのラストネーム。
ピーター・メイビアは1960年代から1970年代にかけて一世を風びしたサモア系レスラーの大御所で、ロッキー・ジョンソンは70年代から1980年代前半まで活躍した黒人レスラーだった。
アフリカ系とサモアンの混血。本名ドゥエイン・ジョンソン。プロレスラーとしてはサード・ジェネレーションにあたる。1972年5月生まれだから、2000年の誕生日が来た時点で28歳。プロフットボール(CFL)を3シーズン経験したあと、父ロッキーとパット・パターソンのコーチを受けて1995年にデビュー。WWE在籍4年足らずでWWE世界ヘビー級王座を3回獲得した。
ニックネームは“ピープルズ・チャンピオンPeople’s Champion”と“ザ・グレート・ワンThe Great One”だが、ロックという呼び名もどちらかといえば愛称といってよかった。超人気者だけれど、古典的な正統派レスラーというのともちょっとちがう。
ロックにはベビーフェース(正統派)とヒール(悪役)というプロレスにおける基本的な分類はまったくあてはまらなかった。観客にとってはロックはあくまでもロックだから、正統派も悪役もない。
おしゃべりだけを聞いていると高飛車で、声が大きくて、侮辱的な表現を好んで用いる。しかし、観客はロックの言葉のひとつひとつにポジティブに反応した。
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