後輩が平気で嘘をつくので困ってます【女性39歳・会社員からの悩み相談】
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆後輩が平気で嘘をつくコで困ってます
鼻セレブ(ペンネーム) 会社員 女性 39歳
職場の後輩が空気を吸うように嘘をついてしまうコです。頼んだ書類を催促すると「ほぼ終わってます」と言いながら、まったく手をつけてなかったりは日常茶飯事です。
取引先との打ち合わせの調整を頼んだのになかなか決まらないのでおかしいなと思って確認したら「調整中です」。なのに、取引先から「時間の調整の連絡がないのですが、どうなってますか?」という問い合わせがあって嘘がバレたこともあります。
こう嘘をつかれてばかりだと仕事を任せられないとキツめに言っても、2週間もすると同じことをします。自己防衛本能が強いのか、言い訳も多いです。
勝手な想像ですが、佐藤さんは嘘と真実がないまぜとなった世界でお仕事をされてきたのではないかと。どうやって、嘘をつく人と付き合っていったらいいでしょうか?
◆佐藤優の回答
人間は嘘をつかずに生活することができません。お世辞や気休めも、厳しく言えば嘘です。入試準備が不十分で、受験に失敗することが確実な息子や娘に「大丈夫だ。力を出し切ってこい。道は開ける」と言うのも嘘です。なぜなら受験に奇跡はないからです。その時点の学力が正確に反映され、合否が決定します。
あるいは、癌で医学的には余命がいくばくもないことがわかっている人に対して、「頑張れ。きっと元気になるから」と励ますことも、客観的に見れば嘘になります。
このあたりの事情を巧みに表現したのが村上春樹氏です。最新作の『騎士団長殺し』で出てくる騎士団長(実は目に見えないイデアなのですが、いろいろなものの形で現れます。主人公の前には飛鳥時代の服を着た騎士団長として現れます)がこんなことを言います。
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「歴史の中には、そのまま暗闇の中に置いておった方がよろしいこともうんとある。正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」(『騎士団長殺し 第Ⅰ部 顕れるイデア編』449頁)
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騎士団長は、ある種の事柄については、あえて真実を明らかにせずに、嘘のままにしておいたほうがいいと考えているようです。「嘘がいいことか、悪いことか」と尋ねた場合、私は「ケース・バイ・ケースなので何とも言えない」と答えると思います。
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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