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ジョニー・エース=ジェラシーの標的Target――フミ斎藤のプロレス読本#038【全日本プロレスgaijin編エピソード7】

 プロレスラーになったエースは、いままで考えてもみなかった客観的な視点で自分のルックスと向かい合うようになった。いちばん最初のボスだったダスティ・ローデスは「おみゃーはグッドルッキンだからジョニー・エンジェルって名前にすんべ」といって自信ありげにうなずいた。  もしあそこで“ノーNO”といわなかったら、甘ったるいオールディーズの“ジョニー・エンジェル”の曲に乗ってリングに上がらされるところだった。 「ジョニー・エンジェルはかんべんしてください」と頭を下げて頼むと、こんどはジョニー・エースというリングネームを用意してくれた。  シェーン・ダグラスとのコンビでダイナミック・ドゥーズなるタッグチームに仕立て上げられたこともあった。ピンクやイエローやグリーンの蛍光カラーが混じった競泳用の水着をはかされ、ベースボールキャップを後ろ前にかぶり、子どもっぽいスケートボードを持って歩かされた。  自分が自分ではない作りものにされていくようで、そのときプロレスがイヤになりかけた。ジルさんのコトバを借りれば「ジョンがジョンであるため」にはなにをしなければならないかをエースは考えた。  もともと、兄アニマルに説得されてプロレスを選択したのだから、こんどは自分から兄に頼んで全日本プロレスにブッキングしてもらうことにした。  全日本プロレスではいろいろな選手たちといっしょになった。ドレッシングルームはいい意味で動物園のような空間だった。  親分のスタン・ハンセンがプロレスのなんたるかを一から教えなおしてくれた。レスリングもケンカもめっぽう強いテリー・ゴーディとスティーブ・ウィリアムスがいる。  ルックスも性格も地味で身長もあまり高くないが、だれにもマネできないようなレスリングの技術を持ったジョーとディーンのマレンコ兄弟がいる。  上昇志向の強いダグ・ファーナスとダニー・クロファットがいる。新弟子あがりのリチャード・スリンガーがいる。そして、どうしてこんなに努力できるんだろう、どうやったらこんなにプロレスに対してひたむきになれるんだろうといつも驚かされる小橋建太がいる。
斎藤文彦

斎藤文彦

 エースは、もしかしたらジェラシーこそプロレスラーのヴァイタミンではないかと本気で考えるようになった。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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⇒連載第1話はコチラ

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