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ダグ・ファーナスの野心――フミ斎藤のプロレス読本#035【全日本プロレスgaijin編エピソード5】

ダグ・ファーナスの野心――フミ斎藤のプロレス読本#035【全日本プロレスgaijin編エピソード5】

『フミ斎藤のプロレス読本』#035全日本プロレスgaijin編エピソード5は「ダグ・ファーナスの野心」の巻。ファーナス&ダニー・クロファット(左側)のカンナム・エキスプレスは、全日本プロレス所属の外国人タッグチームだった(Photo Credit:Fumi Saito)

 199X年

「デイビーボーイがWWEをやめたってな」

 後楽園ホールの4階のドレッシングルームにつながる通路のよこでダグ・ファーナスに声をかけられた。いつものことながら、ボーイズの情報収集の速さには驚かされる。

 “ブリティッシュ・ブルドッグ”デイビーボーイ・スミスがなんらかの理由でWWEのリングからフェードアウトしてからまだ2週間もたっていない。

 WWEが――インターネットがまだ日常生活のなかになかった1990年代は――契約タレントの退団をわざわざメディアに発表することはまずないし、日本のプロレス・マスコミもまだこのニュースを報道していない。

 ボーイズは、地球上のどこにいてもあくまでも口コミで最新情報を伝達し合う。ファーナスは、デイビーボーイと同じタイミングでアルティメット・ウォリアーもWWEをやめたという情報もつかんでいたが、このネタにはあまり興味がないようだった。

 ウォリアーというよりもWWEの内部事情にはあまり関心はないが、ファーナスにとってちょっとだけ気になるのは、デイビーボーイがこれからどうするつもりなのか、ということだった。

 あまりにも全日本プロレスの景色になじんでいるためついつい忘れてしまいがちではあるけれど、ファーナスほど傑出したスポーツ歴を持ったアメリカ人レスラーはめったにいない。

 ベンチプレス601ポンド、デッドリフト821ポンド、スクワット985ポンド、合計2407ポンドのワールド・レコードをはじめ、パワーリフティングで合計29個の世界記録を打ち立てたばかりか、プロフットボールではNFLデンバー・ブロンコスに在籍したエリート・アスリートである。

 プロレスのキャリアは5年。デビューはアラバマのインディペンデント団体だったが、これまでのレスラー生活のほとんどを全日本プロレスでのツアー活動に費やしてきた。これからもこの基本路線は変わらない。

 ファーナス自身は全日本プロレスのリングに上がることに誇りを持っているし、いまのところアメリカのメジャー団体と契約するつもりもない。

 ファーナスがデイビーボーイの動向に注意をはらっているのは、WWEを出てフリーの身になったデイビーボーイが再び自分の“行動半径”に足を踏み入れてくる可能性があるからだ。

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ファーナスがダニー・クロファットとタッグを組んだ理由

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