ジョニー・エースはいつのまにか“3割バッター”――フミ斎藤のプロレス読本#043【全日本ガイジン編エピソード12】
日本武道館Budokanのメインイベントといえば、トリプル・クラウン(三冠ヘビー級王座)のタイトルマッチだ。
チャンピオンベルトをめぐる闘いも大切だけれど、毎年3月にはシングルのトーナメントもある。“チャンピオン・カーニバル”の優勝と三冠ヘビー級王者はどっちが上になるんだっけ? 秋になったら、そろそろタッグ・トーナメントのことを頭に入れておかなければならない。
1年を通じてのプログラミングがきっちりと決まっているから、選手たちは長いペナントレースを闘っていくような感覚で1試合、1試合をこつこつと積み重ねていかなければならない。エースはもう何シーズンも“馬場監督”のもとでプレーしている。
ホテル住まいをしているといっても、1年のうちの20週間もここで暮らしているのだからもうトーキョー・ガイジンといってもいい。地下鉄だって日比谷線と銀座線だったら迷わず乗れるし、東銀座と六本木のあいだはいつも行ったり来たりしている。
このチームで10年も“4番”を打っているハンセンは、日本で成功するにはまずホテルから出てそのへんをぶらぶら歩いてみること、ジャパニーズ・ピープルと会話を交わし、ジャパニーズ・カルチャーをよく知ることだ、と教えてくれた。
気がついたら、エースも“3割バッター”になっていた。オールジャパンのリングで生きていくためには、このリングで自分がどう変わっていくかを考えつづけなければならない。いま自分が立っている場所をよくたしかめてみれば、プロレスとのかかわり方がみえてくる。
「プロレスラーというものは、花道に出てきたら、お客さんよりも頭ひとつくらいデカくなきゃはなしにならん」
もうずいぶんまえに、エースはミスター・ババからそういうレクチャーを受けた。
いつもいちばん近くにいる“ドク”ウィリアムスは、残りの現役生活をオールジャパンのリングで過ごすつもりでいる。エースはエースで、3年後のブドーカンのことを考えるようになった。
土曜の夜は、おとなしくホテルにいればテレビで『全日本プロレス中継30』を観ることができる。エースは、自分の試合をエアチェックしてからベッドに入る――。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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