ジョニー・エースはいつのまにか“3割バッター”――フミ斎藤のプロレス読本#043【全日本ガイジン編エピソード12】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
ジョニー・エースは、いろんなところでいろんな人たちが自分の悪口をいっていることを知っている。あいつはブロンド・ヘアだから、プリティ・ボーイだから、ミスター・アンド・ミセス・ババのお気に入りだから、エトセトラ、エトセトラ。
ビコーズbecauseがたくさんついたあとの結論は、たいしたレスラーでもないのにオールジャパン・プロレスリング(全日本プロレス)でビッグマネーを稼いでる、というところに導かれる。
雑音はだいたいアメリカのほうから聞こえてくる。本場アメリカにはプロレスだけでは食っていけないボーイズがたくさんいる。
それがほんとうのことでなかったら、どこでなにをいわれてもなんともない。エースは、そういうノイズが耳ざわりだったらボリュームを下げればいいということを知っている。
はじめのうちは気になって気になってしようがなかったけれど、いまならたいていのことは笑い飛ばせる。とにかく、そのくらいのレベルのプロレスラーにはなってきた。
オールジャパンは、プロ野球でいえば読売ジャイアンツのようなチームだ。放送時間が深夜ワクに追いやられても、番組が30分に縮小されても、シリーズ中のビッグマッチは毎週、必ず日本テレビのネットワークで日本全国にオンエアされる。
TVマッチに登場するのは、やっぱり“1軍”の選手たちばかりで、スタン・ハンセンやスティーブ・ウィリアムスはメジャーリーグからやって来た長期滞在型のホームラン・バッターたちだ。
エースのスーツケースのなかには日本でプレーしたがっているフリーのアメリカ人選手たちの売り込み用キット(パブリシティ写真、プロフィル表、試合のビデオ)がいくつも入っている。アメリカの多くのレスラーたちは、オールジャパンをオプションのひとつのようにとらえている。
デモ・テープをそこらじゅうにバラまいておけば、そのうちのひとつくらいはどこかの団体にひっかかるだろうと考えているようだが、それではオールジャパンのリングには上がれない。ミスター・ババはチーム・プレーヤーを求めている。外国人選手であってもそれは変わらない。
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